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アパートの「レントロール」から把握する適正家賃や空室リスク、チェックすべき4つのポイント

賃貸契約の現状を把握できる「レントロール」。レントロールには不動産投資物件の収益を左右する情報が隠されていますが、細かな部分まで入念にチェックしなければ、賃料設定の妥当性や秘められたリスクなどを見落としがちです。単純に賃料収入の合計額や想定利回りだけで良し悪しを判断していると、期待を裏切るキャッシュフローとなってしまう恐れがあるのです。そこで本記事では、レントロールでの要チェックポイントを解説していきます。

真の収益性や秘められたリスクがわかる重要資料「レントロール」

レントロール(rent roll)の直訳は「賃借料(rent)の台帳(roll)」で、「賃貸借条件を一覧表にまとめた書類」のことです。賃貸アパートや賃貸マンション、テナントビルなど、複数の入居者に貸し出している不動産物件の購入を検討する際に用いる参考資料として作成されています。

区分所有マンションや戸建て賃貸住宅の場合は、借主が1人しか存在しないので、ひとつの賃貸借契約書を見れば、その全容を把握できます。しかし、複数の借り主が存在している1棟所有のアパートなどでは、それぞれにおいて賃料をはじめとする契約条件に違いが生じるものです。

レントロールとは、一覧表にまとめることによって、借主ごとの賃貸契約条件を個別に確認しやすくした資料です。レントロールですべての賃貸契約の中身を把握することによって、その物件に期待できる真の収益性や、密かに存在しているリスクなどを見極められます。

レントロールの中身を見てみる

残念ながら、レントロールは法律などによって義務づけられているものではありません。そのため、作成していない売主(現時点での物件オーナー)も一部で見受けられます。

また、公に定められた書式(フォーマット)が存在しないのも実情です。レントロールが用意されていても、買主側が最も知りたい肝心な情報が抜けているケースも少なくありません。

しかしながら、レントロールを作成しなかったり、存在していても記載内容が不十分であったりする物件のオーナーは、情報開示に関して不誠実な売り手であるともみなせるでしょう。逆からいえば、その物件を円滑に売却したいオーナーは、買い手からマイナスの印象を抱かれないように、きちんとレントロールを作成して情報開示を徹底するのが賢明といえます。

先述したように特定のフォーマットがなく、どのような形式でレントロールを作成するのかについては売主の自由な裁量に委ねられています。ただ、もっぱら以下のような項目に関する情報が記載れているのが一般的です。

  • 階数
  • 号室(部屋番号)
  • 現況
  • 契約状況(入居中、空室、入居予定、退去予定)
    ※入居・退去予定の場合はその日付も記載
  • 用途(住居、店舗、事務所など)
  • 契約者(個人、法人といった契約者の属性)
  • 面積(賃貸借の契約面積)
  • 間取り
  • 契約賃料
  • 共益費
  • 敷金もしくは保証金
  • 契約日(更新日)
  • 契約期間
  • 備考
    ※事件や事故、心理的瑕疵など、買主に対して告知義務が生じる内容がある場合に記載。また、フリーレントなどの特約があるケースもここに記載。

[図表]レントロールの例
   出所:筆者作成

レントロールを確認したい場合は、その物件の販売を仲介している不動産業者に提出を求めます。契約者の個人情報も含まれているため、閲覧に当たっては秘密保持誓約書への署名が必要となるケースもあるようです。

家賃の合計だけじゃない…レントロールで要チェックのポイント、4つ

①空室の状況とその募集賃料

まず、「現況・契約状況」の欄に“空室”と記載されている部屋を見つけたら、その募集賃料がいくらの設定なのかを確認しましょう。近隣の競合物件(相場)と比較したうえで、その募集賃料をもとに想定利回りを算出しているのか否かも確認したいところです。

空室の想定賃料は、同タイプの部屋における直近の契約実績と同等となるのが一般的です。ただし、退出後のリフォームで室内の設備などをグレードアップしている場合は、もっと高めの設定にするケースも見られます。

②空室率と空室の原因

築年数や間取り、利便性などの条件が似通っている近隣物件と比べて空室が目立つ場合は、賃料設定が妥当ではない可能性が考えられます。賃料設定には特に問題がない場合は、管理会社を変更すると空室率が改善することもあります。

一方、安定した賃貸需要が見込めないエリアに位置し、近隣物件においても空室が頻発しているなら、購入を検討する余地はないでしょう。とにかく、空室率が高かった場合はその原因を探ることが非常に大切です。

③法人による複数の部屋の一括借上げ

「契約者の属性」も見逃せないポイントで、同じ法人が複数の部屋を社宅として借り上げ、同時期に入居しているというパターンは要注意です。一見、個人よりも契約期間が長くなる傾向があり、滞納のリスクも相対的に低い法人との契約は、オーナーにとっては望ましいもののように思われるかもしれません。

確かにそれらは大きなメリットですが、その法人の契約が解消すると、一気に空室率が上昇してしまいます。オーナーにとって特に大きな痛手となるのは、長期間にわたって継続され続けてきた法人との契約が打ち切られるケースです。

新たな入居者を獲得するための募集賃料は、経年などを踏まえて低めの設定にせざるをえません。大掛かりなリフォームを実施して物件価値を高めたうえで募集を行うのも一考ですが、その負担分だけ利回りは低下します。

④同タイプの部屋における契約賃料の比較

「間取り」と「契約賃料」についても、しっかりと精査すべきポイントです。広さや間取りが同じ部屋が複数存在し、入居年数の浅い契約者の賃料が安くなっている場合は、経年によって物件の価値が低下して値下げをしないと空室が埋まりにくい状況に陥っていると推察できます。

もしも、長く住み続けていた契約者まで退去すると、その部屋の賃料も引き下げざるをえないと考えるのが賢明でしょう。こうしたケースにおいては、すべての部屋が直近の契約実績に基づいた賃料に設定し直したうえでその利回りを計算し、真の収益性を判定するのが無難です。

ここまでの要点についてまとめておきましょう。レントロールを確認する際に特にチェックすべきは、

  • 空室の状況とその募集賃料
  • 空室率と空室の原因
  • 法人による複数の部屋の一括借上げ
  • 同タイプの部屋における契約賃料の比較

上記、4つのポイントです。

レントロールのチェックで、健全なアパート経営を実現しよう

きちんと隅々までチェックしてみると、その物件の真の収益性や潜んでいるリスクを察知できるのがレントロールです。そして、チェックの際には先に挙げた4つのポイントを特に注視するのが読み解くコツとなってきます。

もちろん、滞納の発生状況や通信環境(インターネット回線・Wi-Fi)などの設備面に関しては期待されていないケースが主流で、レントロールだけで物件購入を決断できるわけではありません。とはいえ、期待外れのキャッシュフローや不測のトラブルに翻弄されないためにも、レントロールは絶対に見逃せない重要資料だといえます。

アパート経営オンライン編集部

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アパート経営オンラインは、堅実・健全な不動産賃貸経営業をナビゲートする情報メディアを目指し、既に不動産を経営されている方、初めて行う方に向けてお届けするサイトです。

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