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海外移住、外国人投資家、海外在住の相続人…国際税理士が解説する、不動産オーナーのための「国際税務」実践ガイド

不動産オーナー自身が海外移住したり、海外在住の親族へ相続したりした場合、不動産が日本にあっても、当事者の居住地が海外であるだけで、税務のルールはまったく異なります。本記事では、投資用不動産の相続における国際税務について、税理士法人奥村会計事務所所長・奥村眞吾税理士が解説します。

不動産オーナーが海外移住する場合

アパートなどの賃貸不動産の所有主が海外に住む事例は多くあります。たとえばアメリカ留学や就職、結婚などでそのままアメリカに住み続けた場合、日本国籍であっても「アメリカ居住者」となり、税務上は「日本非居住者」として扱われます。

出国時に必要な「準確定申告」

日本の不動産所有者が海外移住する場合、まず「準確定申告」が必要になります。 通常、所得税の確定申告は、その年の1年間の所得を翌年3月15日までに行います。しかし、たとえば8月15日に出国する(非居住者となる)場合、その年の1月1日から8月15日までの所得を計算し、出国時までに確定申告と納税を済ませなければなりません。

必須となる「納税管理人」の届け出

ただし、出国時までに「納税管理人」の届け出を税務署に提出している場合は、準確定申告の期限が延長され、翌年3月15日までの申告・納税でよい、と定められています。

納税管理人とは、非居住者本人に代わって、納税事務処理(申告書の提出や納税、還付金の受領など)を行う人のことです。個人でも法人でもよく、親戚や友人、あるいは税理士がなるケースが少なくありません。

海外移住後も賃貸収入が日本で発生する場合や、固定資産税の納税義務が残る場合は、所得税・地方税ともに、必ず納税管理人を指定する必要があります。なお、納税管理人は、万が一税金を滞納しても代わりに納税する義務までは負いません。

相続人や所有者が海外に在住している場合

近年、親が亡くなり、海外在住の相続人が賃貸不動産を相続する、といったケースも増えています。海外移住者はもとより、相続で国内不動産を所有することになった海外在住日本人は少なくありません。日本人は日本国籍を離脱する人が外国に比べると極端に少ないため、海外に長年住んでいても、日本の不動産を相続する可能性が高いのです。

このような海外に住んでいる(非居住者である)オーナーも、日本居住者と同様に、1年間の不動産所得を計算し、翌年3月15日までに日本で確定申告を行う義務があります。

最も注意すべき「家賃の源泉徴収(20.42%)」

非居住者がオーナーである場合、実務上最も注意すべき点が「源泉徴収」です。

国内の賃貸不動産の所有者が非居住者の場合、賃借人(借りている側)は、家賃の支払金額について20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)を源泉徴収し、税務署に納付する義務が生じます。

たとえば月の家賃が30万円の場合、賃借人は6万1,260円を源泉徴収して税務署に納付し、残りの23万8,740円を非居住者である大家に支払わなければなりません。不動産管理会社が間に入っている場合は、その会社が源泉徴収を代行するのが一般的です。

唯一の例外は、賃借人が個人であり、その個人または親族が「居住用」として借りている場合のみ、源泉徴収義務はありません。

日本と居住国、両国での確定申告…「減価償却費」の耐用年数が異なることも

非居住者オーナーは、日本での確定申告に加え、当然ながら現在住んでいる国(居住国)でも確定申告が必要です。

個人の所得税は、国籍に関係なく居住国で確定申告を行うのが原則です。その際、居住者は自国の所得だけでなく、海外で得た所得も含めた「全世界所得」を申告する必要があります。たとえば、日本の居住者は、アメリカや中国に所得があっても、日本の税務署にそれらを合算して申告し、日本で納めた源泉徴収税や所得税額は「外国税額控除」として差し引きます。外国で納めた税額が二重課税にならないようにするためです。

これらは租税条約で定められており、若干異なる国はありますが、おおむね「居住国」での申告が基本となります。ただし、米国市民権者だけは例外で、居住地に関わらず米国での確定申告義務が生じるなど、ほかの国とは異なるルールが適用されます。

注意点として、不動産所得の計算に必要な「減価償却費」の耐用年数は、日本のルールではなく、居住国の税法に従わなければならないため、計算結果が日本と異なる場合があります。

非居住者が国内の不動産を売却した場合

日本の非居住者が国内の不動産を譲渡した場合も、その譲渡所得は日本で申告する必要があります。

売却代金の源泉徴収(10.21%)

家賃と同様、売却時にも源泉徴収が伴います。この場合、購入者(買った側)が、譲渡対価の10.21%を源泉徴収して税務署に納めなければなりません。

ただし、以下の3条件がすべて揃った場合に限り、源泉徴収は不要となります。

  • ①譲渡対価が1億円以下である
  • ②購入者が個人である
  • ③購入者本人またはその親族が「居住用」として購入する

国際税務は「専門家による継続的な確認」が不可欠

経験則からみると、日本人はたとえ海外に何十年住んでいようと、歳をとると帰国するケースが外国に比べて多い傾向があります。そのため、海外にいながら日本の不動産を持ち続けるという選択は珍しくありません。

一方で、日本の居住者でありながら、海外に賃貸不動産を所有している人もかなりの数がいます。 もともと海外に住んでいて、その国で賃貸不動産を取得したまま日本に帰国した人や、近年増加している個人で海外不動産に投資している人などです。いずれの場合も、海外現地の不動産所得を海外で申告し、さらに日本でもその所得を加算して申告する必要があります。

このように、国境をまたぐ不動産所有はさまざまなケースがありますが、共通していえるのは、税制は日本も海外も毎年変わるということです。従って、海外在住のオーナーであれ、海外不動産を持つ国内オーナーであれ、ご自身の居住国(または日本)の税制と、不動産所在地国の税制、その両方の最新の動向を、専門家とともに継続してフォローしていくことが不可欠です。

奥村 眞吾氏(税理士法人奥村会計事務所 所長)

奥村 眞吾氏(税理士法人奥村会計事務所 所長)

上場会社をはじめ医療法人、公益法人、海外法人など多数の企業の税務や相続税対策のコンサルタントとして活躍するかたわら、日本経済新聞社、朝日新聞社などの講師もつとめ、東京、大阪、海外などでも講演活動を行っている。著書に『お金持ちに捨てられる日本』など多数。


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