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税務調査で狙われる「減価償却費」と「修繕費」…税理士が教える確定申告“手残りを増やす”ための正しい節税術

中古アパート経営の“旨味”は、家賃収入だけではありません。「減価償却費」と「修繕費」を正しく活用することで、合法的に所得を圧縮し、手残りを大幅に増やすことが可能なのです。しかし、その計上ルールは複雑で、税務調査のリスクも伴います。本記事では、税理士の木戸真智子氏がその最適バランスを見極め、不動産所得を最大化するための実践的な知識を伝授します。

中古アパート経営で「減価償却費」と「修繕費」が重要な理由

賃貸経営においては、長期目線でのキャッシュフローの見通しが不可欠です。長く賃貸をしていると、必ずどこかで修繕が必要になります。この修繕にかかった費用の会計処理は、大きく以下の2つにわかれます。

  • 修繕費:その期において経費処理できるもの
  • 資本的支出:固定資産の取得とみなされ、数年にわたり「減価償却」として経費化するもの

確定申告や決算の際、毎年の決算書をどこまで読み込んでいるでしょうか。賃貸経営業として一年間の業績を振り返ることはもちろん、融資を受けている場合は、金融機関への報告という重要な役割もあります。

「節税」と「銀行評価」のバランス

節税を優先して修繕費を一括計上すれば、その年は赤字になるかもしれません。しかし、赤字決算は金融機関からの評価に影響します。なぜ赤字になったのか、それが将来の収益性を高めるための妥当な支出であるかを、自分自身で論理的に説明できるレベルで把握しておくことが、安定経営の第一歩です。

「減価償却費」を制する者は中古アパート経営を制す

節税という観点からみると、その年ですぐに経費にできる「修繕費」のほうが魅力的にみえるかもしれません。しかし、数年単位でみれば、経費化するスピードが異なるだけでトータルの効果は同じです。

ここで意識すべきは、投資のゴールである「出口戦略(売却)」です。

毎期の減価償却費を大きく取れば、経営中の所得税・住民税は抑えられます。しかし、減価償却を進めるほど物件の「帳簿上の価値(未償却残高)」は下がっていきます。その結果、売却時には以下の計算式によって建物の売却益が膨らんでしまうのです。

売却金額 - 減価償却後の金額 = 売却益

つまり、「経営中に節税した分だけ、売却時の税金が重くなる」という仕組みです。この出口での納税額を見通しているかどうかで、最終的に手元に残る現金の額に大きな差がつきます。売却直前になって慌てないよう、数年前から税理士とともにシミュレーションを行っておくことをお勧めします。

「修繕費」と「資本的支出」の境界線を見極める

実務上、非常に悩ましいのが「修繕費」と「資本的支出」の区分です。税理士としてアドバイスする際の、シンプルな判断基準をご紹介します。

簡単に説明すると、

  • 修繕費 → 原状回復、壊れたものをもとに戻すこと、定期的なメンテナンス
  • 資本的支出 → 長く使えるようになる、新しい機能が加わる、バージョンアップする

という違いです。

迷ったときは、この「価値を元に戻すためのものか、それとも高めるためのものか」という基本に立ち返って考えると、区分がスムーズになります。

税務調査で指摘されにくい「確定申告」

税務調査においては、この「修繕費か資本的支出か」の判断は指摘されやすいポイントの一つです。多くのケースでは「修繕費」としていたものが、「資本的支出」とみなされたことで指摘を受けます。そうなると、その期においてすべて経費としていたものが、一部経費ではなくなるため、修正申告のうえ、追徴課税や過少申告加算税が発生することになります。

税務調査で重要なのは、「なぜ修繕費として計上したのか」という正当な理由を説明できることです。これは、前述した金融機関への説明能力とも共通します。

正当性を主張するためには、客観的な資料に基づいた「説明力」です。たまに「領収書さえあれば大丈夫」と考える人もいますが、領収書一枚だけでは工事の具体的な「中身」を証明することはできません。

税務調査官を納得させるために、工事業者から受け取った見積書や契約書、図面といった資料を詳細に保管しておきましょう。どのような意図でその修繕を行ったのか、資料をもとに説得力を持って説明できる準備を整えておくことが、不備なく手残りを最大化できる確定申告へと繋がります。

自信をもって確定申告に臨むために

修繕費と減価償却費の活用において、最も大切なのは「目先の節税にとらわれすぎないこと」です。

無理な経理処理は税務調査のリスクを高め、極端な節税は将来の出口戦略や融資に悪影響をおよぼします。数年先、そして売却までを見据えたトータルのキャッシュフローを考えることが、安心・安定した賃貸経営への近道です。

ご自身で数字の根拠をしっかりと把握し、胸を張って確定申告を迎えられる経営を目指しましょう。

木戸 真智子氏(税理士事務所エールパートナー 税理士)

木戸 真智子氏(税理士事務所エールパートナー 税理士)

2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。


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