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「確定申告」を提出した40代・サラリーマン大家…税務署からの「お尋ね」の対象となったワケ【税理士が解説】

締め切り間際の、確定申告。毎年確定申告を行うアパートオーナーですが、なかには税務署に狙われやすい申告をしてしまっている人もいるといいます。税務署からのお尋ねの対象となるのは、どのような申告をしている人でしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともにアパートオーナーの確定申告で注意すべきことについて、税理士の小川明雄氏が詳しく解説します。

確定申告後に届いた税務署からの「お尋ね」

Aさん(40代、男性)はサラリーマンとして勤務する傍ら、賃貸アパート(6室)を保有して3年目になります。一昨年の4月に物件を取得してから、継続して満室で経営できています。

Aさんは費用節約のため、自分で確定申告書を作っています。前回は、4月~12月までの賃貸収入と経費の申告でしたが、初めての不動産所得の申告であるうえに、物件の取得があったため耐用年数を調べるなど、大変でした。

今回で不動産所得の確定申告も2回目です。3月に入って、Aさんは前回の申告内容をお手本にしながら、確定申告の作業を開始しました。

Aさんは「前回の確定申告は、物件の取得の処理があったから大変だったけど、今回の確定申告は楽だ」と思いつつ作業を進めます。不動産所得の金額が前回と同じくらいになったので、安心して確定申告書を提出しました。

確定申告が終わって2ヵ月ほどあったある日、Aさんのもとに税務署から封筒が届きました。内容を確認してみると、申告内容を確認したいという内容のようです。

「なにかを間違ったか」とよくよく内容を確認してみると、賃貸収入が12ヵ月分計上されていないのではないかという趣旨のことが書いてありました。

Aさんは、確認が不十分なまま、1年目の確定申告書をお手本に2年目の確定申告書を作ったため、賃貸料が1年目と同額の9ヵ月分しか計上されていなかったのです。

Aさんはすぐに税務署に電話をし、計算を間違えた旨を伝えたところ、修正申告書を作成し、追加で納税を行うこととなりました。

アパートオーナーが確定申告で気を付けるべきこと

賃貸収入がある場合、基本的には、不動産所得を申告しなければなりません。

不動産所得は、青色申告承認申請書を提出している場合には青色決算書を使い、そうでない場合(いわゆる白色申告の場合)には、収支内訳書(不動産所得用)を使って計算結果を申告する必要があります。

当然ですが、記載する内容は正確でなければなりません。書類を一目見ただけで誤りがあることがわかるような書類を出してしまえば、申告期間後に税務署からお尋ねが来るなど、もっと余計な手間がかかる可能性があります。

ここでは、白色申告の収支内訳書(不動産所得用)を作成する際に、一般的に注意すべき点をご紹介します。国税庁の下記の手引を見ながら、各ポイントをご確認ください。

・令和5年分 確定申告書の様式・手引き等
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/r05.htm

・令和5年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/pdf/019.pdf

不動産所得の収入の内訳

■「貸家・貸地等の別」や「用途」について、記載漏れがないようにしてください。アパートの場合、「貸家」と「住宅用」と記載することになります。

■「賃貸料」は「月額」と「年額」を記載する箇所がありますが、前回確定申告のものを見て書き写すと、入居者の出入りや賃料の変更があった場合にミスが発生します。不動産管理会社からの書類や、預金通帳の入金履歴を確認するなどして、実績に基づいて記載ください。

■「保証金 敷金」は12月31日時点の預り残高を記載ください。

専従者控除

■事業に専ら従事する家族がいる場合、一定金額を控除できる制度です。家族が会社勤めや個人事業主の場合には、適用できません。

■実際に支払った給与を経費に計上できるわけではない点に注意が必要です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm

■また、この制度は不動産所得が事業的規模に該当する事業者のみ適用可能です。事業的規模に該当するかどうかは、物件の規模により決まります。集合住宅の室数10室以上、あるいは、独立家屋5棟以上である場合には、事業的規模に該当します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm

減価償却費の計算

■物件の取得時や追加工事を行った時には、減価償却資産を追加する必要があります。

■資産の種類によって耐用年数が異なりますので、新規資産を取得した場合には、手引きに記載されている表をよくご確認のうえ、耐用年数を決定ください。

■償却方法は、原則として、定額法です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

修繕費の内訳

■資産の価値を増したり、耐用年数を延長したりする工事は、修繕費ではなく、固定資産の追加取得(資本的支出)として取り扱われます。その場合は修繕費に含めず、「減価償却費の計算」欄に記載してください。

■修繕費とならないものについては、国税庁の下記案内を参考にするとよいでしょう。特に、判定フローがわかりやすいです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm

提出前に書面の内容を確認

提出する申告書に、一目でわかるようなミスがあれば、税務署からお尋ねがきて、その対応に時間を取られることになります。

申告書を準備する際には、税金のルールの確認だけでなく、集計ミスや入力箇所の誤りなどがないよう慎重に作成ください。一度印刷して、手元で見直すだけでもミスを発見しやすくなります。

確定申告の準備は気が重いものですが、少しでも早くに始めていただき、余裕を持って終わらせられるようにしてください。

記載の手引きやe-Taxのシステムの案内が充実していますので、説明をよく確認のうえ、作成しましょう。

小川 明雄(小川堀田会計事務所 税理士・公認会計士)

小川 明雄(小川堀田会計事務所 税理士・公認会計士)

M&A・事業承継・国際税務のアドバイザリーを得意とし、事業再編の取引手法の検討、ファンド組成手法の検討、デュー・ディリジェンス業務に従事している。


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