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「賃料保証会社がついているから安心」ではない…連帯保証人ナシの借主を抱えた中古アパートオーナーに起きる悲劇【弁護士が解説】

中古アパートオーナーであれば、賃料保証会社がついているから、安心だろうと考えている人も多いでしょう。確かに最近の賃料保証会社の契約であれば、原状回復費用もカバーする内容の保証契約になっているかもしれません。一方で、数年前の保証契約の場合、油断は禁物で……。本記事では、中古アパート経営における保証契約について、不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

保証契約は「保証人ではなく保証会社へ」

2020年の民法改正をはじめ、保証人制度の見直しがあり、裁判例上も連帯保証人への請求は難しくなってきました。そのため近年、保証契約は「保証人ではなく保証会社へ」という流れになっていると思います。地域性にもよるかと思いますが、少なくとも都心部周辺では、ほとんどの物件で賃料保証会社が必須になってきているのではないかと思います。

そもそも連帯保証人がなぜ機能しないかという点を解説します。大家側からすると、連帯保証人に連絡をいれても支払ってくれない場合には、連帯保証人に対して裁判等の手続きが必要になる、というのが一番大変なポイントだと思います。賃料保証会社であれば、保証料を支払う代わりに賃料保証会社が賃料を保証してくれます。また、契約内容次第ですが、立退訴訟などの裁判も賃料保証会社が代わりにやってくれるような契約もあります。

不動産投資、大家業を行う際には、トラブルに見舞われたときに備えて、そのトラブル解決費用も自分で負担して物事を解決しなければならない、ということを頭に入れておく必要があるでしょう。

「保証会社がついているから安心」ではない理由

ただ、賃料保証会社に入っていれば安心というわけではないのが、本記事のメインテーマです。連帯保証人への請求がほとんど機能しなくなってきている昨今、そういう点では賃料保証会社のほうが頼りになるでしょう。一方で、賃料保証会社も営利企業です。トラブルがあった際に、なにからなにまですべてを保証してくれるわけではありません。火災保険などと同様に保証の範囲、契約内容を吟味しておく必要があります。

注意するポイントの一つが、原状回復費用です。近年は、原状回復費用も保証対象に含まれる契約が増えているようですが、数年前の契約では原状回復費用が保証対象外という契約もあります。また、原状回復費用の保証がついていたとしても、その上限や保証範囲など、契約約款の確認を欠かさないようにしましょう。不明点は契約担当者にも質問をして、手控えを残しておく必要があります。

さらに、賃料保証も2ヵ月分など保証上限が定められているケースもあります。2ヵ月なのか3ヵ月なのか、など賃料保証の上限がどのようになっているのか契約内容を確認すべきでしょう。

大家と保証会社、それぞれの利害関係

実際にあったご相談として、立退訴訟に移行するタイミングの問題などの質問を受けたことがあります。

相談内容としては、「賃料を2ヵ月ぐらい滞納していても、思い出したように未払い分を支払ってくれるような入居者がいる。賃料保証会社としては2ヵ月分未払いになったため、機械的に立退訴訟の手続きをとるという連絡が入った」というものでした。

相談者は、このように未払いと支払いを繰り返していた入居者であることを理解していたため、大家の立場として、この入居者とそれなりに上手くやってきました。しかし賃料保証会社を入れるとなると当然、賃料保証会社の利害もでてきます。そのため、賃料保証会社との契約内容により、どのタイミングで立退訴訟などが提起されるかも変わってきます。

総括すると、比較すれば連帯保証人への請求よりも賃料保証会社のほうが、保証が手厚く助かる場面が多いかと思います。しかし、賃料保証会社は契約により保証内容に制限をかけていることが多いため、大家さんが思っているほど充実した保証を受けられない可能性があるという点は注意すべきでしょう。

火災保険の特約などと同じイメージで、どこまでどういう保証が受けられる契約なのか、契約時に読みづらい資料だとしても確認、質問して、理解してから契約を進める必要があるでしょう。

今後増える可能性も…保証会社の破産リスク

本記事は、賃料保証会社の契約にも留意して対応しましょう、という内容ですが、従前の保証人制度よりはだいぶよくなったと思います。また、賃借人側として「なぜ保証会社などを利用せねばならないのだ!?」というクレームもあるようですが、入居時点では大家さんのほうが入居者審査の場面で強い権限をもっています。そのため、今後も賃料保証会社の利用は加速してくように思います。

ただ、契約内容を精査するだけではなく、今後出てくる問題として、賃料保証会社も民間企業にすぎないので、賃料保証会社が破産するというような問題も生じてくるのではないかと思います。賃料保証会社としては、審査を甘くして保証料を安くすれば契約はたくさん取れるはずですが、そのような契約の取り方をしていると、トラブルが想定を上回ってきたとき、賃料保証会社が破産してしまうというケースも生じかねません。

「賃料保証」という名のもとに、拡大したサブリース会社が破産するような事件が起きたように、賃料保証会社の破産という事件も今後増えてくるかもしれません。その予防のためには、契約内容の審査に加えて、賃料保証会社の資産規模や与信などの審査も考えていかねばならないでしょう。建設会社の破産問題と同様に、不動産賃貸業を行っていくうえでは、取引先の破産に備えるという思考も持ち合わせていかなければならない世の中になってきたといえるでしょう。

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

専門は不動産法務、相続分野。実家の不動産トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。


クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続のトラブルについて、自分ごとのように解決策を提案できることが何よりの喜び。


さらに不動産・相続法務に特化した業務に注力するため、2020年4月1日、不動産・相続専門事務所として山村法律事務所を開設。


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