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中古アパート投資のはずが、「住宅ローン」の不正利用…知らぬ間に犯罪に加担させられないための防衛策【弁護士が解説】

近年、不動産の知識に乏しい層を狙った、住宅ローンの不正利用を伴う投資詐欺が相次いで摘発されています。「不動産投資目的」を隠して居住用の住宅ローンを申し込ませる手口です。悪質なケースでは、融資金を得たあとに建物の質を極端に下げ、差額を業者が不当に搾取する事例も報告されています。本記事では、弁護士の溝口矢氏が、実例に見るこうした詐欺手口の全貌と、知らぬ間に詐欺の当事者にならないための法的注意点を解説します。

住宅ローンを利用した投資提案の違法性と、投資家を待ち受けるリスク

住宅ローンは、自身や家族が居住するための住宅を購入・建築・リフォームする際、銀行などの金融機関から資金を借り入れる際の融資制度です。自由に使える一般的な借入と比較して、低金利かつ長期間で返済ができる点に特徴があります。

ただし、利用ができるのは自身が居住することを目的としたものであるときに限ります。第三者に賃貸して家賃収入を得る投資用物件の購入等にあたって住宅ローンを利用することはできないのです。

しかし悪質な業者は、次のような甘い言葉で、住宅ローンの不正利用をそそのかしてきます。

「投資用であるとしても居住用と申請すれば低金利の住宅ローンを組める」

「金融機関に居住用であると伝えてもまったく問題ない」

「家賃収入で返済できるので実質的な負担ゼロでノーリスク」

このように目的を偽り、住宅ローンを不正利用して金融機関から融資を受ける行為には、重大なリスクが伴います。具体的には、融資金の一括返済を求められる可能性や、金融機関に対する詐欺罪に問われるなどの刑事事件へ発展する可能性など、法的リスクが挙げられます。さらに、利益をもたらさない「負動産」を背負わされるリスクも伴うのです。

知らなかったでは済まない…金融機関に対する詐欺罪の成立リスク

住宅ローンの不正申請で最も恐ろしいのは、資金を借り入れた本人が刑事罰の対象となり得る点でしょう。

金融機関を欺いて融資を受ける行為は、詐欺罪(刑法第246条第1項)に該当し、10年以下の拘禁刑に処せられる可能性があります。また、住宅ローンを利用する際の文書に居住目的であると偽るような記載を行うと、文書偽造罪等に問われることも考えられます。

悪質な業者から「みんなやっている」、「バレないから大丈夫」と説明されていたとしても、自らが金融機関との契約書類に署名・押印して融資を申し込んだのであれば、法的には「融資資格を偽って資金を騙しとった当事者」とされてしまいます。

あとから「知らなかった」、「業者に指示されただけ」と主張しても、法的責任を回避するのは極めて困難です。

当然、借主本人の代わりに業者が責任をとってくれるようなこともありません。それどころか業者は、自らに責任追及の手がおよばないよう、借主が独断で不正に住宅ローンの申請をしたかのように見えるような資料を用意しておくなどの対策を講じていることすらあります(※)。最悪の場合、すべての法的責任を借主だけが負うという展開にもなりかねません。

※悪質業者の典型的な隠蔽手口

口頭での説明時は住宅ローンの不正利用の案内をしながら、形に残る資料では住宅ローンの不正利用をしないよう注意書きを入れておくなどといった手口です。いざ不正利用が判明してトラブルになった際、住宅ローンの不正利用をしないよう注意書きが記載されている資料しか残っていませんので、業者側は「住宅ローンの不正利用を案内するはずがない」「借主が独断でやった」と弁解して責任逃れを図ります。

実際、借主が住宅ローンの不正利用をさせられたとして、不動産会社やローン代理店に対する損害賠償請求をした民事訴訟において、裁判所は、借主の請求をすべて棄却しています(東京地方裁判所令和7年7月25日判決(令和6年(ワ)第20530号))。

融資金を抜くために「建物の質を極端に下げる」…購入後に発覚する粗悪物件の恐怖

住宅ローンを不正利用させる業者の狙いは、借主にリスクを負わせて金融機関から融資金を引っ張らせ、その融資金から不当に巨額の利益やバックマージンを得るところにあります。

悪質な業者は、必要な水準を大幅に下回る安価な建材や手抜き工事をして「粗悪な物件」を建てたうえで、多額の工事費用等を請求してきます。そして、この費用を住宅ローンの不正利用によって金融機関から引き出した融資金から支払わせるのです。これにより、業者側は労せずして大きな利益を吸い上げることができます。

こうした粗悪な物件に事後的に施工不良による雨漏りや耐震性の欠陥等が発覚しても、業者は倒産を装って音信不通になったり、黒幕に責任がおよばない形だけの会社を盾にしたりして責任追及を逃れていきます。

その結果、借主の手元には「資産価値のない不完全な物件」(いわゆる「負動産」)と「巨額の住宅ローン」だけが残され、家賃収入が得られないまま修繕費等の維持費とローン返済の支払いに追われる被害事例も見受けられます。

甘言の拒絶と書面の精査…弁護士が推奨する防衛策

悪質な業者による被害を受けないようにするためには、適切にリスクを把握し、提案内容を慎重に吟味できるよう、フラットに話を聞く姿勢が不可欠です。

①「投資目的に住宅ローンが使える」という提案は即座に断る

居住用以外の目的で住宅ローンを利用することは違法です。そのような提案があった時点で「違法行為をそそのかす悪質な説明である」「まっとうな業者でない」と判断してください。

②「自己資金ゼロ」「絶対儲かる」といった言葉を信じない

投資一般にもいえることですが、まったくリスクがない不動産投資・確実に儲かる不動産投資はありません。まったくリスクがなく、確実に儲かるかのように見せる営業トークには落とし穴があります。警戒心を持ち、自身で慎重にリスクを検討しましょう。自身の判断に自信が持てない場合は、必ず信頼できる第三者に相談することが大切です。

③金融機関との契約書面を確認し、違和感があれば署名前に専門家へ相談

高額な取引に関する書類については、自身で内容確認をすることが必要不可欠です。業者任せにせず、金融機関との契約書面等には「自ら居住する」旨の確認項目があるか、必ず確認するようにしましょう。少しでも違和感や疑問があれば、弁護士や公的な相談窓口に相談してください。契約前に慎重に契約書類を精査することは、自身の身を守ることに繋がります。

不動産の取引は、どのような種類であっても、非常に大きなものであることがほとんどです。購入時やローン契約時には、石橋を叩いて渡るつもりで、慎重にリスクの検討をするようにしましょう。

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。 弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。 知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。


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