アパート経営は「法人・個人」どちらがお得?
アパート経営において、法人と個人、どちらで行ったほうが「お得」なのか、という点で悩む方は少なくありません。インターネットで検索すると「法人化が得をする」と書かれている記事がたくさん出てきますが、必ずしもすべての投資家に対して当てはまるわけではありません。法人化のメリット・デメリットを比較し、個人・法人でのアパート経営、どちらが自身に合っているのかを見極めましょう。
不動産投資を「法人化」するには?
近年は「税率が低い」「法人設立のハードルが低くなった」等の理由から、法人によるアパート経営が注目されています。
アパート経営の法人化とは、法人を設立してアパートを所有、経営を行う方式を指します。投資家は代表者として資本を出資し、会社から報酬を受け取るという形で、投資の利益を得ることになります。
あくまで不動産投資のためだけに設立されるため、極めて個人に近い法人であるといえるでしょう。こうした会社は「資産管理会社(プライベートカンパニー)」とも呼ばれます。
資産管理会社を設立するための大まかな流れは、以下のとおりです。
- 1. 会社設立に必要な基本項目を決める
- 2. 代表印、銀行印を作成する
- 3. 基本項目をもとに定款を作成し、公証役場に提出する
- 4. 資本金を払い込む
- 5. 登記書類を申請する
- 6. 法人口座の開設を税務署などに届け出る
メリット:法人化は、相続や税金対策に有効
個人で始めるケースと比べると、いささか手順が多いように思える法人化。なぜ会社を設立する投資家が多いのでしょうか。
個人の場合、不動産所得(不動産所得=収入金額-必要経費)から所得控除を差し引いた課税所得が900万円を超えると合計税率が43%に達し、法人の実効税率を上回るようになります。このことから、課税所得が900万円を超える場合は、法人化することでメリットを得られるのです。
また、法人化することで個人よりも経費の認められる範囲が広くなるという点もメリットのひとつです。
個人投資家は、投資の経費と家事消費を厳密に分類する必要があるため、経費で落とせるものが限定されてしまいます。個人は単なる消費のためにお金を使う可能性がありますが、法人はもともと利益を追求する組織であることから、無駄な経費は使わないという考え方が前提にあるためです。
経費として認められる範囲は個人よりも法人のほうが広く、共済金や保険料が経費として計上できます。 また、法人化は相続においてもメリットがあります。不動産は遺産分割しづらく、相続人の間に不平等が生まれてしまう可能性があります。法人化することで、相続財産が「不動産」から「株式」に変わるので、平等に分割しやすくなるのです。
デメリット:「法人化」には初期費用が掛かる
法人を設立するには数十万円の開業資金が必要です。何より、法人はランニングコストがかかります。たとえば決算書作成時の税理士への報酬(50万円前後)や「均等割り」といわれる税金など、低く見積もっても年間で50万~60万円はかかってしまうのが現実です。ですから、法人化はこれらのコスト以上の税効果が見込める方にのみ、有効な方法といえるでしょう。
他にも法人化には、
①所有期間が5年超となるアパートを売却する場合、個人より法人のほうが売却時の税率が高い
②取得から3年以内は株価が高い
というデメリットがあります。
②の場合、取得から3年以内は資産の評価額が時価になりますので、相続税評価額の減額ルールは適用されないことになります。したがって、仮に法人でアパート経営を始めてから3年以内に相続が発生してしまうと相続税対策にはなりません。
また、資産管理会社は不動産投資に関わる資産の管理目的のみで設立されるため、「ビジネスの実態がない曖昧な法人」という見方もできます。銀行には「実質的に同一の借入人に対する融資金額に上限がある」といったケースが大半であり、仮に「資産管理会社」を多数設立して「別人」を装った場合においても、融資金額に制限がかかる場合があります。
さらに、A資産管理法人において上手くアパート経営が出来ていたとしても、B資産管理法人が赤字の場合、そちらの経営に資金流用されてしまう可能性を銀行としても考えるため、銀行としては経営実態が掴みにくいことから、この場合、どうしても銀行の融資審査が厳しくなってしまうというデメリットも考えられます。融資をスムーズに進めたい場合には、事前にできる限り金融機関への情報開示や信頼関係を築いておく必要があるでしょう。
なお、法人であれ個人であれ、融資を行った銀行への決算情報や入居状況の報告は適宜求められますので、常に現況を把握しておく必要があります。
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