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引っ越しシーズンに知っておきたい…「原状回復」で高額費用がかかる“意外な場所”

アパート 原状回復

賃貸住宅において、退去者が発生すると必ず関わってくるのが「原状回復」という問題です。クロスやフローリングなどの張替えや、ハウスクリーニング、設備の交換などにはどの程度の費用がかかり、貸主(物件オーナー)と借主(入居者)のどちらが負担すべきなのでしょうか? 本記事では、賃貸物件における原状回復の部位別・費用相場について解説します。                        

原状回復費用は貸主と借主、どちらが負担する?

そもそも原状回復義務とは、借主が賃貸住宅を退去する際に、入居時の状態に戻して貸主であるオーナーに返す責任のことを意味しています。もっとも、歳月の経過によって自然に生じた傷みや不具合については「経年劣化」とみなされ、借主は原状回復義務を負わず、オーナーが費用を負担して原状回復を行うことになります。

実は、この「経年劣化」に該当しなくても、「通常損耗」に該当するとみなされた場合には、やはりオーナーが原状回復のための費用を負担しなければなりません。「通常損耗」とは、通常の生活を送るなかで生じてしまった物件の損傷のことを指しています。

長く生活を続けてきた結果として、床板や壁などに軽度の汚れや傷が生じてしまうことは珍しくありません。これらはいずれも、「通常損耗」の範疇とみなされるのです。

国土交通省が1998年に公表したガイドラインでは原状回復について、

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

と定義しています。要は、通常の暮らしのなかで生じた汚れや傷みに関して、借主は回復の責任を負わないということです。

一方、借主が故意につけた傷などの痛みは「特別損耗」と呼ばれ、借主が原状回復義務を負います。ただし、本来なら「通常損耗」とみなされるものであっても、たとえば「退去時にクロスを貼り替える」などといった原状回復特約が賃貸借契約において、貸主・借主合意のもとで交わされていれば、借主が費用を負担することになります。

賃貸物件の部位別「原状回復の費用相場」

原状回復を行うべき主要な部位としては、

・壁のクロス張り替え
・床(フローリング・カーペット・クッションフロア)の張り替え
・カビ
・水垢の除去
・畳の表替え
・網戸の張り替え
・ハウスクリーニング

などが挙げられます。また、防犯上の観点からドア鍵の交換も求められてきますし、劣化や破損が目立つ場合には便器や洗面台、流し台の交換も必要となってくるでしょう。

具体的にどの程度の費用がかかるのについて、それぞれにおける相場をまとめたのが下記の一覧表です。このうち、さまざまな張替えのなかでも特に負担が重いといえるのがフローリングでしょう。

フローリングの張替えについては、その傷が生じた原因によって責任の所在が異なってきます。故意ではなかったとしても、借主がつけてしまった傷の修復に関しては、本人(借主)が負担しなければなりません。

これに対し、入居前から存在していた傷や経年劣化によって生じた傷に関しては、オーナーが張替え費用を負担することになります。その判断のためにも、入居前の時点で床全体の写真撮影を行って証拠を残しておくことが重要です。

なお、クロスについては前述のガイドラインで6年が耐用年数と定められています。それを超える期間にわたって居住して退去した場合には残存価値が1円とみなされ、借主は張替え費用をほとんど負担しなくてすむといわれています。

しかしながら、たとえ耐用年数を超えていたとしても、借主の故意もしくは過失によって傷や汚れをつけた場合は、本人(借主)が修繕などにかかる費用を負担すべきケースがあると司法は判断をしています。

また、鍵の交換に付いても、借主とオーナーのどちらが負担すべきかが論点となりやすいでしょう。前述したガイドラインでは、ドア鍵の交換費用はオーナーが負担するのが妥当とされています。

しかし、法的な拘束力はないうえ、賃貸借契約書において借主が交換費用を負担する旨の特約が盛り込まれているケースが多く、その場合はオーナーが負担しなくてすみます。気になる交換費用は一般的な鍵なら負担はさほど大きくないのですが、防犯性に優れたディンプルキーの場合は2万5,000円程度に達するケースもあります。

※一般的なカギのような鍵山がなく、カギの表面に深さや大きさの異なる多数のくぼみ(ディンプル)をつけたカギのこと

「原状回復」で高額費用がかかる“意外な場所”とは?

部署別の原状回復コストについては、おおよそイメージしていたとおりの相場観だったかもしれません。特に床の張替えは面積が大きくなるほど軽視できない負担になるだけに、入居者とオーナーのどちらに責任の所在があるのかを揉めごとなく明白にすることが重要なテーマとなってきます。

もうひとつ、便器や洗面台、流し台などの設備の交換は費用がかさむだけに、できるだけ先延ばしにしたいと考えるのがオーナーの本音でしょう。しかし、国交省のガイドラインで便器や洗面台の耐用年数は15年と定められているのも確かです。

もちろん、耐用年数を超えて使用できるケースも少なくないでしょうが、そのころから傷みが目立ち始めるケースもあるからこそ、ガイドラインに具体的な数字として定められているともいえます。流し台の耐用年数に至ってはわずか5年で、エアコンやガス機器も6年と意外に短命の設定です。

いずれの交換費用も、賃貸経営においては決して軽視できない負担となります。耐用年数に近い時期に寿命を迎えることも念頭に置きながら、原状回復に対する費用の備えを進めることが得策でしょう。

アパート経営オンライン編集部

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