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当てはまったら要注意…アパート投資で失敗する〈ダメな事業計画書〉【チェックリスト】

アパート投資で失敗しないために…信用できる「不動産会社」の選び方

株式やFXに比べて価格の変動が少なく、毎月安定した収入を得られる不動産投資。金融機関から融資を受けて始めることができ、購入後の管理も管理会社に委託できる手軽な資産運用として注目されています。しかし、出口戦略まで見通した入念な事業計画が組まれていなければ、安定した家賃収入を得ることはできません。今回の記事では、Aさんのアパート投資の失敗事例を元に、不動産会社の選ぶコツについて学んでいきましょう。

Aさんの不動産投資の失敗事例

【投資家プロフィール】
Aさん(52):男性
投資対象:新築アパート

中小企業で会社員として働くAさんは、昨今のさまざまな社会情勢の変化から、将来に漠然とした不安を感じていました。安心できる生活基盤づくりを求め、仕事をしながらでも無理なく取り組める資産運用としてアパート経営を始めました。不動産会社に相談に行き、担当者から説明を聞くなかで「高利回り」に魅力を感じて、土地と新築アパートを購入。「資産価値が高く、賃貸需要が期待できる」といわれたため、頭金は用意せず、すべての物件取得費用をローンで賄う「フルローン」を組みました。

最初の数年間は、不動産会社に作成してもらった事業計画書どおり、入居率をほぼ100%に保つことができていました。ところが、運営して5年を過ぎたころから、年々、空室が目立ち始めます。フルローンで高額になった毎月の返済額は、全額家賃収入から支払っていたため、このまま空室が続くとローンの返済額を自己資金から捻出しなければならないことに……。

いずれは、会社を辞めて家賃収入だけで暮らしていこうかと考えていたAさんでしたが、事業計画どおりにいかず、将来に不安を感じています。

どうしたら失敗を防ぐことができたのか

Aさんのように事業計画書の見通しが甘いまま、収益性を目当てに物件を購入すると、失敗する可能性が高まってしまいます。安定した家賃収入を確実に得たいのであれば、表面的な利回りだけで判断するのではなく、「実質利回りはどうなのか」「家賃は適正価格であるかどうか」「空室リスクはどこにあるのか」などを正しく見極めましょう。

アパート経営を成功させるには、投資を始める前の「準備段階」から意識すべきポイントがあるのです。

Point 1.現実的な事業計画が組めているか

実は、金融機関に融資を申し込む際に必要な「事業計画書」が、不動産投資成功までの「地図」の役割を担っています。利益の見込める事業計画書を作ることが、何よりも大切です。

Aさんの場合、不動産会社が作成した「バラ色の収支シミュレーション」を鵜呑みにして、アパート経営を始めてしまいました。

融資の審査を通すために書かれた、夢物語のような「理想の収支計画」をそのまま信じるのではなく、実現性や採算性、成長性を正しく見つめ、最悪の場合まで見込んだ計画を立てることが重要です。毎月の家賃収入に対する支出やローン返済額を計算するのはもちろん、税金の支払いや空室期間、そのほか支出・経費などを幅広く見込んだ計画が立てられているのかどうか、自分自身が本当に納得できるまで確認しましょう。

ちなみに某銀行の担当者は、以下のような項目を確認するといいます。

●満室想定時賃料(火災保険等諸経費込み)×25%で「空室リスク」を計算

今後、人口数(世帯数)は必ず減少します。つまり、賃貸経営は大変厳しい環境に晒されることが予想されるのです。様々なデータを見ると、首都圏において、空室発生から、次の入居者が決まるまでの平均期間は2〜3ヵ月。地方ではより長い時間が必要となります。これらの要素を勘案すると、入居率の平均は75%程度と考えておく必要があるのです。

●借入期間を通じてDSCR(元利金返済カバー率)が1倍を超えているか

新築のアパートは、好立地であれば入居率100%が期待できます。しかし、全借入期間を通じてはそうはいきません。アパートは少しずつ劣化が進んでいくため、基本的には家賃収入が減っていくことが予想されます。つまり新築時の家賃が続くわけではないのです。

家賃収入で、安定的なローン返済を続けていくには、減少していく家賃を想定し、かつ空室リスクを控除したとしても返済元利金がカバーできる事業計画になっているかどうか、検証しなければなりません。

●「金利リスク=将来、借入金利が上昇していく」ことを想定し、審査時のレートは3%

現在の借入金利は歴史的に見て大変低くなっています。アパートローンの大半は「変動金利型」になっていると思われますが、長期間返済を続けるローンにおいては、当然、これらの金利変動リスクを想定しておかなければなりません。

また、不動産会社が作った「事業計画書」を確認する際には、特に意識すべき重要な項目が2つあります。

●表面利回りに惑わされない

不動産投資における利回りは、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。物件の購入費用に対する家賃収入をそのまま数値化した「表面利回り」に対して、建物管理費や修繕積立金、賃貸管理手数料に固定資産税などの諸経費を加味した「実質利回り」は、投資成功につながる大きな判断基準です。

不動産管理会社の広告やWebサイトなどに掲載されている物件情報では、どちらの利回りを指しているのか定かでないことも少なくありません。提示されている数字をしっかり調べ、実質的に手元に残る金額を確かめましょう。

●損益計算(PL)を要チェック

事業計画書内にある損益計算(PL)を見ると、「税引前損益※1」がいつ黒字化しているか、「累積繰越損失※2」がいつ解消しているかを確認できます。「税引前損益」が早期に黒字化していなければ、「累積繰越損失」を解消できず、利益が積み上がらずに投資失敗となる可能性が高いため注意が必要です。

※1:「税引前損益」…税金を引く前の利益で、経常的に得られる利益(経常利益)に臨時的に得られた損益(特別損益)を加えた利益のこと。

※2:「累積繰越損失」…過去から現在までの不動産投資の赤字が積み上がったもの。

Point 2. 長期的な見通しに着目

Aさんのように新築物件でアパート経営を始める場合、新築といえる期間を過ぎて「中古」になったころまで綿密な事業計画が立てられているのか、必ず確認しておきましょう。修繕計画(小規模改修5年~中大規模改修10年)についても織り込まれていることが望ましい項目のひとつです。なお、中古物件を購入する場合は「建物診断書」の取得が有効となります。

アパート経営は博打ではありません。メリットだけでなく、リスクを想定した事業計画を立てることで、投資の成功率を高めることができるでしょう。

アパート投資の成功に少しでも近づくためには、不動産管理会社が作った事業計画書があなたに合わせてプランニングされたものなのか、納得できるまで検証することをおすすめします。

事業計画書を作成した際には、下記、「ダメな例」の特徴に当てはまっていないか、自身でチェックしてみてください。

「ダメな事業計画」チェックリスト

【収支計画】

  • 計画期間中において、常に満室時の想定賃料が続いている
  • 近隣の賃料相場情報が検討されていない
  • 想定賃料と融資返済金額がギリギリになっている
  • 管理費や税金等の諸費用の見積もりが十分ではない
  • 定期的な修繕費が想定されていない
  • 計画期間中において、金利の上昇が想定されていない
  • 物件の劣化に伴う賃料の下落が想定されていない(新築家賃想定で計画されている)
  • オーナーの生活環境の変化(収支の変化)が想定されていない

【建築/購入計画】

  • 路線価や固定資産税評価額等をベースにした物件評価が行われていない
  • 平方メートルあたりの建築単価が検討されていない
  • 建築/仲介/管理業者の評価が行われていない
  • 建築場所や購入物件の現地調査が行われていない

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アパート経営オンライン編集部

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