銀行員「残念ですが、貸せません」…年収2,000万円のエリート会社員が融資を断られたワケ
不動産投資のカギを握るローン(融資)。年収が2,000万円あっても、アパートローンの審査に通らない場合も……。いったいどうしてなのでしょうか。ある地方銀行の融資担当者に、不動産投資市場の現状と、ローン審査のポイントについて話を伺います。
「キャッシュを稼げる不動産はインフレに強い」
担当者は現在、首都圏を中心に中古1棟アパート向け融資などを担当しています。最近の不動産投資市場をどのようにみているのでしょうか。
担当者「米国をはじめとした世界的なインフレ進行を背景に、一部では日本でも今後金利が上昇するのではないかと気にする向きもあるようです。ただ、いまのところ中古1棟アパートに対する投資家の意欲は変わっておらず、ご融資のご相談は着実に増えています。
もちろん、無理なレバレッジを掛けているケースは金利が上昇すると収支は苦しくなりますが、基本的にキャッシュを稼げる不動産はインフレに強いというのが私たちの認識です」
投資用不動産を選ぶ際、ポイントとなるのがエリアと賃料相場、そして入居ニーズです。では、担保として物件を審査する金融機関は、具体的にどのようなポイントを重視しているのでしょうか。
担当者「エリアとしては1都3県が圧倒的です。また、立地という点では駅から近ければ近いに越したことはありませんが、周辺の家賃相場とのバランスも大切な指標のひとつであり、入居者にとって家賃や設備のニーズが合致していることが欠かせません。
たとえば、バス便物件であっても1人1台の駐車スペースが用意されていれば、多少家賃が高くても入居ニーズはあります。そうした立地を選ぶ入居者にとって車は生活必需品だからです」
年収2,000万円だが審査に通らない…なぜ?
担当者が融資する投資家で多いのは、年収2,000万円以上の企業経営者、医師、弁護士、外資系会社員の人だといいます。年収2,000万円以上ともなれば融資も簡単に通るだろうと思ってしまいますが、実際には借りられないケースもあるとか……いったい、なぜなのでしょうか。
担当者「高収入であっても審査に通らない理由として多いのが、すでに複数物件をお持ちの場合、既存の借入があまりに多いケースです。いくら収入が多くてもその20倍、30倍のお借入があると、ご融資は慎重にならざるをえません。
また、私たちはその投資家が『どのように物件を購入・経営してきたか』という点にも注目します。たとえば、ある2人の投資家について合計の資産規模は同程度であっても、10年かけてコツコツ積み上げてこられた方と1、2年で一気に買われた方では違います。1、2年で一気に買われたような方は、一概にはいえませんが不動産会社に勧められるがまま、買っている可能性もあるからです。
不動産投資の経験があるのかないのか、不動産を始めるきっかけや、なぜこの物件を購入するのか、投資家が不動産投資に向き合う姿勢も私たちにとっては重要なポイントです」
もうひとつ、担当者が重視するのが物件それぞれのキャッシュフロー。トータルで黒字を確保していても、そのなかにひとつでも赤字の物件が混じっていると、融資は難しくなるといいます。
「不動産投資はマンションやアパートという生活の場を入居者に貸す事業(ビジネス)であり、オーナーは経営者です。たとえば飲食業や小売業で赤字の店舗があれば、経費を抑えたり模様替えしたりなんらかの手を打つでしょう。アパート経営も同じように、キャッシュフローが回らない物件があればなにか対策をすべきです。
たとえば、リフォームやリノベーションをして訴求効果を高めることや、繰上返済をして毎月の返済を抑えることが具体的な対策として考えられますが、それを放置しているとしたら、経営者としてのマインドに疑問符がつきます」
以上は複数物件を所有している人に対してですが、初めて不動産投資を行おうという人に対しても融資を行っているのでしょうか。
担当者「不動産投資の経験がまったくない方がご融資の相談に来られるケースはもちろんあります。その場合にはまず、不動産投資で理解しておくべきリスクをきちんとお話します。
たとえば中古で空室がある物件を検討しているのであれば、いつから空室になっているのか、それを今後どのように埋めていくのか、きちんと確認しているかどうかを伺います。不動産会社から満室想定の利回りだけ聞いて『なんだかよさそう』というだけで買おうとするのは危険ですし、経営の持続も難しくなります。
ローンがいくら借りられるか、金利はいくらで返済期間はどれくらいか、購入という目先の条件を気にされるかもしれませんが、対象の物件が継続的に安定したキャッシュフローを生み出せるのか、投資家のみなさまが不動産投資のリスクをしっかり理解したうえで着実にアパート経営を続けていけるかどうか、という中長期的な視点も重要なポイントとなります」
『投資家が気にするポイント』と『金融機関が気にするポイント』に違いがあることも認識しておくと、融資がよりスムーズに進むかもしれません。
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