息子3人にアパートを継いでほしい…トラブル回避のためのポイント【相続・生前贈与】
相続にはトラブルがつきものです。仲良しな兄弟や姉妹、親族間であっても、トラブルが原因で疎遠になる……ということは珍しくありません。トラブル回避のためには、相続の手順とお金の流れを整理して、全員が納得のいく方法を選ぶべきです。今回は、賃貸アパートのオーナーが、相続トラブルを避けるためには、どのような手段を選択するべきなのか、相談事例をもとに解説していきます。
「アパート」の相続…揉めない方法は?
【投資家プロフィール】
60代女性 Bさん
【Bさんからの相談】
夫の死後、相続した賃貸アパートの大家業で生計を立てています。夫はもしものときに備えて遺言書を用意してくれていたため、トラブルが多いと聞く相続時にも揉めることはありませんでしたが、私の死後、息子3人がアパートの相続で揉めてしまわないか心配です。
長年入居してくれている人がいるため、なるべく息子の誰かに大家業を継いでほしいと思っていますが、息子達はアパート経営の知識がありませんし、公平に財産を分けられる自信もないため、なかなか決心がつきません。
相続でトラブルを避けるには?
<ポイント>遺言書を作成する
相続時のトラブルを避けるためには、遺言書を作成するといいでしょう。遺言書は大きく分けると、自筆証書遺言、公正証書遺言の2種類が存在します。自筆証書遺言の場合は、改ざんによるトラブルが多いため、万全を期すのであれば公正証書遺言の作成をおすすめします。
ただ、遺言書を作成していた場合も、内容を知らなかった相続人同士のトラブルが発生するケースもあるため、被相続人がどのような内容の遺言書を作成したのか、相続人に伝えておきましょう。
アパートの分割方法は主にこの4つです。
- (1)現物分割:現物を相続人全員で分割して受け取る方法です。たとえば兄がアパート、次男は現金、三男は車、というふうに相続財産そのものを相続する方法です。
- (2)代償分割:相続人の1人がアパートを相続する代わりに、他の相続人へ金銭を支払います。
- (3)共有分割:相続人全員で1つのアパートを共有する選択肢です。
- (4)換価分割:相続したアパートを売却し、得た現金を相続人全員で分割します。
共有分割は、その後、子である相続人から孫への相続が発生した場合に権利が複雑になることや、手続き等が煩雑になり時間がかかることがあるので、注意が必要です。
なお、相続後の家賃収入は相続人のものとなりますが、相続人の確定までは相続分に応じて分割されることも、当事者間で確認しておきましょう。
生前贈与のメリット
<ポイント>民事信託を活用する
民事信託(家族信託)とは、生きているうちに財産を配偶者や子どもに委託し、管理を任せられる制度です。遺言の代用として利用することも可能で、近年では認知症で判断力が落ちる前に民事信託の準備を進める人も増えています。委託された相手は、落ち着いて投資や節税の対策ができるのがメリットです。
民事信託は、基本的に委託者・受託者・受益者の三者で構成されます。
- 委託者:財産の所有者
- 受託者:財産を管理・運用・処分することができます。
- 受益者:財産の給付や利益を得ることができます。
このケースでは委託者は母であり、受託者を相続させたい子ども、受益者を母としておけば、アパートから発生する賃料収入は引き続き母のものとすることが可能です。
なお、信託法では「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続した時」、つまり「受託者=受益者」となった場合に終了されると決められています。
所有するアパートについて民事信託を利用すると、受託者は委託されたアパートの管理を行うだけでなく、そのアパートの名義人となります。ただしこの場合は、登記名義人を委託者から受託者へ変更する手続きが必要です。民事信託を考える場合は、その後の手続きについても事前に調べておくとスムーズに進みます。
家族間で話し合っておくことが重要
アパートをはじめとする財産の分配方法について、日ごろから家族と話し合っておくと、もしものときにも安心です。生前贈与を行いたいが、家賃収入がなくなるのは困る……という場合には「民事信託」の活用をおすすめします。親しい身内だけだと冷静に協議できないこともあるので、専門家に相談するなど、第三者のアドバイスを参考にしながら話し合いを進めると良いでしょう。
また最近では、「民事信託」に関する専門家を金融機関が紹介してくれるケースもあります。誰に相談すればよいかわからない時は、金融機関に相談してみることもおすすめできます。
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