「所有するアパート」を円満に相続してほしい…78歳母の願い
どれだけ仲の良い家族・親族であっても、「相続」をきっかけに関係性が悪くなってしまうケースは少なくありません。しかし、子どもや孫を持つ人がアパートオーナーになる場合、相続は避けては通れない道。どのようにすればトラブルを防げるのか、事例をもとに見ていきましょう。
仲の良い娘と息子…「揉めない相続」のためにできることは?
78歳になるAさんは10年前に夫と死別しました。当初、自分の年金だけで暮らしていけるか不安を感じていたものの、亡夫が遺した1棟アパートは入居率が高く、毎月安定した家賃収入を得ることができています。
ある日、Aさんは自宅内で転倒し、足を捻挫してしまいました。命に別状はなかったものの、高齢者の一人暮らしはいつ何が起こるかわからないことを実感し、「相続」について考えるようになりました。
思い入れのあるアパートを子どもたちに託したいところですが、息子と娘、どちらかだけに相続させることで、2人の関係を悪くしてしまうのではないか、と不安を感じています。円満に相続させるにはどうすれば良いのでしょうか。
不動産の分割方法
不動産の分割方法については、次の4通りがあります。
不動産の分割方法
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現物分割
文字通り、不動産を現物のまま分割する方法です。土地のみの場合は平等に近いかたちで分割できる可能性もありますが、すでにある建物を現実的に分割することは困難です。また、Aさんのようにアパートを所有している場合、土地と建物それぞれに価値があるので現物分割は非常に難しいといえます。 -
換価分割
不動産を売却し、金銭に換えて分割する方法です。「現物分割」が難しいと判断された場合、この手段をとることが考えられます。 -
代償分割
特定の相続人が現物不動産を取得する代わりに、ほかの相続人に対しては金銭など自己の固有財産を支払う方法です。これなら不平不満が出ないように見えますが、相続人はそれ相応の資金を準備しなければならないため、注意が必要です。 -
共有分割
複数の相続人で持分を決めて不動産を共有名義にする方法です。賃料収入は等分にわけあったり、管理費などの諸費用も平等に負担したり……と、一見すると最も平和的解決法のように思えますが、万が一兄妹仲が悪くなった場合、大きなトラブルに発展しかねません。また、兄妹にさらに相続が発生した場合は、共有人数が増えて権利関係がさらに複雑化してしまいます。
不動産相続でトラブルを避けるには?
アパートの経営を子どもたちに託したい、と考えているAさんは、現物分割、代償分割、共有分割のいずれかを選択することになりますが、その場合、上述したようなトラブルが考えられます。では、相続時のトラブルをできる限り回避する方法はあるのでしょうか。
答えは、基本的なことではありますが、やはり「遺言書」を作成することです。亡くなった人の意思を記した遺言に従って財産を分割できるため、相続人同士の不要なトラブルを避けることができます。
たとえば今回の質問のケースでは、長男にアパートを、相応の現金を娘に遺す「代償分割」をすることで、円満な相続を実現できるでしょう。
ただ、作成する遺言を「自筆証書遺言」にすると、相続人の死後、改ざんされる可能性も考えられます。万全を期すのであれば第三者である公証人のもとに作成された「公正証書遺言」の作成をおすすめします。
また、なぜこのような財産分けにしたのか、どのようにして相続をしてもらいたいのかなど、遺言者の想いを「付言事項」として付け加えておくと、相続人も納得感を得られるでしょう。
子どもや孫のためにせっかく遺した不動産が、仲違いのきっかけになってしまっては元も子もありません。財産の分配方法については日頃から家族と話し合い、方向性を決めておくと、もしものときにも安心できるでしょう。また、アパートの権利譲渡など、実際にどのような手続きを取るべきかわからない場合には、金融機関の担当者や専門家に相談することをおすすめします。
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