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需要増!アパート経営で「外国人入居者」とのトラブルを防ぐ方法【弁護士が解説】

日本に住む在留外国人の数は、2019年までの20年間で140万人増えています。新型コロナウイルスの影響で一時は減ったものの、入国規制の緩和により今後また増えていくと予想されています。これにともない、日本人と文化の異なる外国人入居者とのトラブルが増え、頭を悩ませるアパートオーナーも少なくありません。外国人入居者とのよくあるトラブル事例をもとに、オーナーが事前にできる対策をみていきましょう。

「外国人入居歓迎」でオーナーが得られる「恩恵」

今後も在留外国人が増えていくと予想される一方で、外国人入居者を受け入れるアパートは多くありません。安定したアパート経営を目指すうえでは、ほかのアパート経営者がまだ参入していない市場はとても魅力的です。外国人コミュニティのなかで、「外国人入居可」のアパートであると周知されれば、退去後も次の入居者の紹介を受けられるでしょう。

また、日本人にとっては人気の低い物件も、外国人にとっては入居をやめる理由にならない場合が多々あります。たとえばアパートの設備において、3点ユニットの部屋でも抵抗なく借りてくれることも多いです。

また、立地についても、外国人は「交通アクセス」と「賃料」を重視する傾向にあるため、工業地帯などの地域も好まれることがあります。特に集客に苦戦しているアパートでは、外国人を受け入れることで、アパート経営を安定させられる可能性を秘めています。

ゴミの放置、騒音、失踪…外国人入居者との「よくあるトラブル」

とはいえ、外国人入居者を受け入れる際には、日本人との文化の違いによるトラブルに注意が必要なことも事実です。

なかでももっとも多い外国人入居者とのトラブルは、ゴミ出し等の「美観」に関わるものです。「ゴミを分別し、回収日に出す」という習慣がない国から来た場合、未分別のゴミを回収がない日に放置することがよくあります。ゴミの放置は、美観を損ねるだけでなく、悪臭や衛生面の問題にもつながります。

また、廊下等の共用スペースを綺麗に使って建物の美観を守るという考えを持たない場合もあり、自分の部屋の前の廊下にゴミや荷物を並べてしまうこともよくあります。これらのトラブルを放置した場合、既存の入居者が退去してしまったり、新たな入居者を集めづらくなったりしてしまいます。

騒音もよくあるトラブルのひとつです。友人を招いて飲食をする際に声が大きくなったり、深夜にも大声で会話したり、パーティーを開く文化のある国の出身者は、その頻度や程度が日本人よりも多いです。ひどい場合は、玄関を開放して廊下でも飲食をし、注意をした隣人に対しても悪びれず、パーティーに参加するよう誘ってきた事例がもあります。

静かな入居者であっても、いつの間にか友人と同居を始め、気づくと居住人数が増えていることも。さらには、入居者が入れ替わっていることもあります。

さらに、賃料の不払いや失踪のリスクも無視できません。これらのトラブルは、日本人入居者の場合にも同様のリスクがありますが、外国人入居者の場合には、入居者の家族等に保証人になってもらえることがほぼないため、問題発生時の解決が困難となります。

アパートオーナーがとるべき「事前対応策」

外国人入居者の多くは、ゴミ出しや騒音についての日本のルールやマナーを知らないだけで、ルールやマナーの内容を伝えれば、それに従ってくれます。そのため、アパートオーナーには、ルールやマナーを「書面化」して説明することが求められます。

説明の前提として、オーナーとコミュニケーションが取れる入居者を選ぶことが重要です。オーナーが外国語に堪能である場合には問題ありませんが、多くの場合、日本語でコミュニケーションを取れることを入居の条件とするのが無難でしょう。

外国語対応が可能な不動産業者を利用することも考えられますが、その場合には、入居後にトラブルが発生した際にも、その不動産業者に対応してもらえるように管理契約を締結する必要があります。

また、オーナーが把握している日本語の契約内容と、不動産業者が作成した外国語での契約内容が食い違っている場合もありますので、信用できる不動産業者を選ぶだけでなく、外国語の契約書のなかに、食い違いがある場合には日本語の契約書の内容が優先されるという文言を入れておくと安心です。

ルールやマナーを説明する際には、わかりやすい説明図をつけ、漢字にはふりがなを付けると丁寧です。日本人の入居者であっても入居前の説明だけではルールを網羅することはできませんので、入居後にもルールやマナー違反が発生した場合には、やさしく丁寧に注意して改善を求める必要があります。多くの場合、注意を受ければ同じ違反を繰り返すことはせずに、素直に従ってくれます。

賃料不払いや失踪への対策としては、外国人に対応した家賃保証会社を利用することが考えられます。契約書の文言も専門家の確認を受けながら、トラブルの発生に対応できるものにする必要があります。

外国人入居者を受け入れ、安定したアパート経営を

外国人入居者を受け入れる場合、ゴミ出しや騒音といったトラブルが生じがちです。賃料不払いや失踪等のトラブルの解決が日本人入居者の場合よりも難しいことも問題です。

しかし、外国人入居者は、外国人入居者を受け入れるアパートが少ないことを理解しています。そのため、きちんとルールを整備して、丁寧に説明をすれば、素直に従ってくれるでしょう。トラブルを起こしてしまうことが多いものの、文化が違うだけで悪気はないということをオーナーが理解して接すれば、外国人入居者は善良な入居者になってくれる可能性が高いといえます。

監修:柿沼 彰氏(柿沼彰法律事務所 弁護士)

監修:柿沼 彰氏(柿沼彰法律事務所 弁護士)

2010年弁護士登録。法律事務所、上場企業経営企画室での勤務を経て、2015年柿沼彰法律事務所設立(東京弁護士会所属)。主な取扱分野は中小企業法務、不動産、相続。経済学修士(東京大学)。


【主な著書】

『裁判例の要点からつかむ解雇事件の訴訟実務』(第一法規・共編著)

『裁判例からつかむ従業員不祥事事件の相談実務』(第一法規・共編著)

『依頼者の争続を防ぐためのケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい・共編著)


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