ある日突然やってくる「税務調査官」…不動産投資家がチェックされやすいポイント【税理士が解説】
個人事業主や本業以外で一定以上の収入を得ている人なら、誰しもが受ける可能性がある「税務調査」。突然やってくる税務調査官に慌てることのないよう、不動産投資家がよくチェックされるポイントについて、税理士の木戸真智子氏が解説します。
「税務調査」とは?
税務調査とは、申告した内容を帳簿などで確認し、正しく申告されているかどうかを調査することです。
調査の対象は、事業の規模にかかわらず、すべての法人および個人事業主です。もちろん副業も対象になります。通常、3年から5年に1度ほどの割合で調査が入ることが多いとされていますが、決められているわけではないため、なかには10年以上来ていないというケースも多々あります。
始まりは1本の電話…不動産投資家への税務調査の実態
税務調査はある日突然やってきます。始まりは1本の電話です。
※税理士に申告を依頼している際には、税務調査のお知らせは税理士に連絡がいきます。
このときに税務調査の日程について話があります。仕事の都合がつかない場合などには、日程変更も可能です。また、どこで調査を実施するのか、場所についても決められます。オフィス、自宅、税理士事務所、税務署など、状況に応じて変更可能です。
調査内容をあらかじめ予測…「事前通知」でメモするべきこと
日程や場所が決まると、正式に「事前通知」が行われます。この際に通知されるのは、実地調査の日時、場所、そして調査対象の税目や年度、準備する書類です。
このとき、しっかりメモを残しておき、調査の目的も必ず確認しておきましょう。調査官は今回の実地調査でなにを見ようとしているのか、あらかじめ確認するためです。
調査官が何名で来るのか、来る調査官の名前もメモしておきましょう。どこの部門から調査官が来るのか、どんな役職の人が来るのかということも税務職員名簿で確認できます。これらの内容である程度、どのような調査内容になるのかを推測できます。
必要書類を準備
準備する書類は非常に多く、主に以下のものが調査の対象です。
- 総勘定元帳
- 領収書や請求書など、帳簿を作成するために必要だったもの
税務調査の日数は、個人事業主の場合1日、法人の場合2日というケースが多いです。なお、これらの書類を置いておくスペースを確保する必要があります。
ここで非常に重要なのが、過去の資料がしっかり整理されているか、揃っているかという点です。過去の資料がどこにあるかわからない、紛失した、税理士から総勘定元帳を受け取っていなかった……といったことがないよう、過去の年度の書類を確認しておきましょう。
調査の対象になる年度は基本的には過去3年分ですが、継続的な取引について確認が必要となる場合には、過去5年分ということもあります。
税務調査当日の1日の流れ
税務調査当日、午前10時ごろに調査官が来訪します。午前中はインタビューが行われます。事業の内容、経緯等、世間話を交えてさまざまな会話をします。
調査官は調査する目的について、確認したい内容をそのときに質問してくることもあれば、世間話をしているなかで調査すべきポイントを探していることもあります。
この時間はその後の調査に大きく影響しますので、事前に準備すべき資料が揃っているかどうか、そしてインタビューも明確な回答ができているかどうかで印象が大きく変わります。
このあたりについては、税理士と当日までにしっかり打ち合わせをして整理しておきましょう。税理士が立ち会う場合にはこのインタビューのみ出席し、あとは税理士に任せて仕事にいくことも可能です。
その後は実際に準備した書類をチェックする時間です。調査官のなかには、オフィスのなかを見学したり、業務の流れをインタビュー形式で質問したりといった調査方法をとる人もいます。
いずれにしてもその内容をもとに、最後に帳簿をチェックするという流れになるため、実際の状況と帳簿や書類がしっかり整理されているかということも非常に重要です。
調査官は基本的には17時には税務署に戻って報告するため、16時までには整理して調査対象者もしくは立ち会っている税理士にまとめの話をします。
ここで調査官が調査した結果、論点となるべきポイントのお話になります。この時点ではまだ確認事項という段階なので、後日、その論点についてやり取りしていくことになります。
不動産投資家が税務調査でチェックされるポイント
①代表的なチェックポイント
不動産投資家がチェックされるポイントとして考えられる代表的なものは、経費の内容や売却価格や地代の客観性、管理費などのお金の流れが問題ないかという点です。
②そのほかの注意すべきチェックポイント
個人と法人間でのお金のやりとり
不動産投資をしていると、法人成りや、資産管理会社を設立していることも多くあり、個人と法人間で不動産の売却や賃料や管理費のやり取りがあるケースもあります。このあたりに恣意性がないかどうかも大きなポイントです。
不動産の売却金額が妥当なものであったかどうかも、売却の際には評価額も確認して資料を残しておく必要があります。
賃料や管理費も同様です。相場を把握し、地代の場合には、無償返還の届出を税務署に提出していることもあり、整理しておく必要があります。賃料や管理費の金額についても定期的に見直しをしておきましょう。
上記の契約書が揃っているかどうかも確認します。契約書の内容では、更新が行われないままになっていないかどうか、「契約期間」を特に注視すべきです。
大家の会での食事代・会費、視察に行った際の旅費などの経費
多くの方が気になるポイントは「経費」ではないかと思います。これは経費になるのかどうかがわからないときは税理士に相談しましょう。意外と経費と考えられることも多くあります。
不動産投資家の方からよく質問されるのが交際費や大家の会での食事代や会費、セミナー代、書籍代、視察に行った際の旅費などです。
これらは不動産投資業に関係があるのであれば、もちろん経費です。税務調査の際に、どのように関係がある経費なのか説明できるよう、メモや資料を残しておきましょう。
たとえば、視察にいった旅費であれば、視察に行った際の物件資料やそのとき対応してくれた不動産会社の担当者の名刺などを保管しておくなどです。日当がある場合には、しっかり旅費規程や精算書も整理しておきましょう。
「税理士の○○先生は税務署出身で税務調査に強く、あの先生なら税務調査が来ないし、なんでも経費にしてくれる」といった話を耳にすることがあります。
調査の対象になるのは不動産投資家本人です。あくまで税理士は税務代理という立場で立ち会いをします。もし実際に税務調査が来たときに、なんでも経費にしてくれたその税理士の先生は、本当に最後まで責任をもって対応してくれるでしょうか。
税務調査の結果、修正があった場合には、加算税がかかります。もし悪質なものとされた場合には、重加算税がかかります。最終的にはそれらを課されて支払うことになるのは、不動産投資家自身であると考えた場合に、後悔のないように日々の帳簿整理をしておくことをおすすめします。
最も重要なのは、日ごろからの準備
税務調査はいつ来るのか、それとも来ないのか、それは誰にも予測できません。予測できないからこそ、日ごろの準備が必要です。税務調査の際にしっかり自分の代弁をしてくれるように税理士と日ごろからコミュニケーションをとっておくことも大事です。
税務調査において、調査官にいわれるがまま認めていると事実を反した結果になってしまうことも多くあります。
「それは違います。こうですよ」と説明できるような状況であることが重要です。事前に心掛けて帳簿や書類整理をしておけば、いつ税務調査が来ても不安に思うことはありません。
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