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築30年の木造アパート…賃貸経営を続ける?売却する?判断のポイントを税理士が解説

アパートの築年数が古くなると、設備に修繕が必要になり、収益性が落ちていきます。そのため、このまま所有すべきか売却すべきかと判断に迷うアパートオーナーも少なくありません。そこで本記事では、所有アパートを売却するタイミングの見極め方について、税理士の小川明雄氏が解説します。

築30年を迎える木造アパートを保有するAさん

Aさんは、家族で会社を経営するかたわら、築30年を迎える木造2階建のアパートを保有しています。これはもともと、父親が存命中に建築したアパートを相続したものです。したがって、すでにローンの返済は完了しており、10年ごとに自己資金で修繕工事を行ってきました。適切な時期に修繕工事を行ってきたことが幸いしたのか、工事の支出を差し引いても十分な水準で運用益を享受できたとAさんは自負しています。

これまでの家賃収入と不動産所得の推移を比較

築30年ということで、そろそろ大規模な修繕が必要になるとAさんは考えました。そこで、どれくらいの資金であれば捻出できるかを検討することにしました。まずは、Aさんの家賃収入と不動産所得の推移を並べてみます。

家賃収入と不動産所得を年度ごとに横に並べて比較してみると、家賃収入はそこまで変化がないのに、直近10年の不動産所得が上昇していることに気づきました。

このことを不思議に思い、Aさんは確定申告を依頼している税理士に聞いたところ、「固定資産の減価償却が終了し始めたから」という回答が得られました。

減価償却とは、固定資産の取得にかかった支出を、一定の年数で分割して必要経費に計上する会計処理のことです。固定資産の取得価額は、固定資産の種類ごとに定められた法定耐用年数にわたって減価償却され、必要経費に計上されます。

たとえば、木造アパートは耐用年数22年、建物付属設備の電気工事や水道工事については耐用年数15年と定められています。このように、取得した固定資産の種類によって耐用年数が異なります。

Aさんの物件は、新築時に支出した工事費用が建物として固定資産に計上されており、減価償却を通じて必要経費に計上されていました。しかし、築22年を越えたことにより、その償却が終わったのです。

また、以前行った修繕工事についても、その一部は耐用年数を延長する効果がありました。これも資本的支出に該当するものとして、固定資産に計上されています。それらの償却も、年々完了に近づいていたところだったのです。

築30年の物件…所有すべきか、売却すべきか?

Aさんのケースでは、物件の家賃収入は変わらない一方で、減価償却費の計上がなくなって不動産所得が増えています。その結果、税金の支払いが増えて、気づかぬうちに手取りが下がっていました。収益性を維持・増加させるためには、修繕などの施策を行ったうえで築30年の物件の所有を継続すべきか、または売却すべきかを意思決定する必要があります。

築30年のアパートでは、大規模なリノベーションや周辺環境の大きな変化がない限り、家賃収入を上げることは難しいです。また、築古物件の家賃水準を維持するためにはこまめな修繕工事が必要となり、いままでよりもさらに出費がかさむことになります。

Aさんは、新築当時のローンを返済したあとは、金融機関との付き合いがありません。大規模修繕を行うにしても手許の資金から出す必要があることから、いままでに得てきた利益を失う可能性が実際より大きく見えてしまいます。

以上のことを鑑みると、Aさんのケースでは、不安を抱えて所有を続けるよりも、現在の物件を売却してほかの投資対象に買い替えを行うのがよいかもしれません。

まとめ

不動産投資は長期にわたる投資ですが、物理的な損耗のために、いつかは手仕舞いをする必要があります。それがいつになるのかは、景気の状況や不動産相場、オーナーの資産状況、投資に対するスタンス、ほかの投資資産との兼ね合いなど様々な要素が影響するため、明確ではありません。

今回のケースでは、法定耐用年数が経過したことによって減価償却費が減少しています。それにより税金面でのコストが増え、収益性が損なわれていたことから、買い替えが最善という判断になりました。

本来であれば、投資前や投資実行時から、いつどのように不動産投資を手仕舞いすればよいか、しっかりと見据えておく必要があります。ただ、運用を始めてみないとわからないことも多いですし、経済の状況や物件の周辺環境によって検討の前提が変わってしまう可能性もありますから、当初の計画がうまくいく保証はありません。

不動産を保有しているあいだは、投資の辞めどきを常に検討し続けることが必要です。目安としては、税務上の法定耐用年数が経過する直前までには、不動産をいつまで所有するか、あるいは、売却するかを意思決定しておくのが望ましいでしょう。

小川 明雄(小川堀田会計事務所 税理士・公認会計士)

小川 明雄(小川堀田会計事務所 税理士・公認会計士)

M&A・事業承継・国際税務のアドバイザリーを得意とし、事業再編の取引手法の検討、ファンド組成手法の検討、デュー・ディリジェンス業務に従事している。


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