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アパート経営40年…所有する「築古物件」は相続すべきか売るべきか

減価償却期間が終わり、インカムも取り終えた築古アパート。今後の家賃下落リスクや修繕費等管理費用の負担を考えたとき、相続すべきか売却すべきか悩むオーナーも少なくありません。そこで、相続と売却それぞれのメリット・デメリットや注意点等について、税理士の宮路幸人先生が税金の観点から解説します。

築古の賃貸物件…相続すべきが、売るべきか

アパート、マンション問わず、一般的に築年数が古くなるほど修繕が必要となり、設備も古くなるため収益性が落ちていきます。このためオーナーとしては相続すべきか売却すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、相続した場合、売却した場合それぞれのメリット・デメリットや注意点について、主に税金の観点から解説していきたいと思います。

賃貸を続けていく場合

賃貸物件も築年数が古くなる場合、設備も老朽化してくるため、なにかと修繕費がかかるようになってきます。ここで賃貸を続けていく場合の考え方は2つです。

ひとつはリフォームし、賃料を維持もしくは値上げをすること。もうひとつは修繕を最小限に抑え、現況のまま賃料を維持・あるいは値下げも検討し賃貸していくことです。

一般的には、建物が古くなりすぎると修繕にきりがなくなってくるなどの理由により、現状維持のまま賃貸している人が多いのではないでしょうか。

相続をした場合

相続人の意向にもよりますが、相続税の納付に不安がなく、賃貸物件を相続してくれる人がいる場合、相続されたほうが有利な点が多いです。その理由としては

① 相続税評価額の計算上、賃貸不動産の場合、小規模宅地等の特例等の評価減の規定を使える場合がある

② 売却する場合でも相続後3年以内の売却であれば、相続税の取得費加算が使える場合、譲渡所得税が少なくなる可能性がある

③ 相続人が引き続き賃料収入を得ることができる

売却したほうがよい場合に

老朽化が進んでいるため、大きな修繕等が必要である場合には、現況で売却先を探すのもいいかもしれません。

次に、賃貸物件の立地がよくない場合です。仮に現状満室であったとしても、退去にともなう入れ替えの難易度が高く、将来の空室リスクが懸念されるため、売却を検討されるのもいいかもしれません。

また、賃貸物件の立地は悪くないものの、エリアの再開発等で周辺に他の賃貸物件が増え競争が激化しそうな場合についても、築年数の経過が不利となるため要注意です。

そのほか賃貸物件を相続したい人がいないような場合も、売却を検討する動機となります。相続後にきちんと管理していく人は必要です。

最期に、償却年数が短く済む等の理由により、税金対策等で積極的に中古アパートを求める不動産投資家がいる場合があります。そのような人がいた場合、売却を検討するのもいいと思われます。

売却する場合はどのような税金がかかる?

不動産を売却する場合、譲渡所得は以下の式で求められます。

譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

この場合における譲渡収入は売却価格となります。なお、固定資産税の精算分として受取る金額も譲渡収入に含まれることにご注意ください。

取得費は売却した不動産の取得価格となります。土地は購入したときの価格となり、建物は取得してから売却時までの減価償却費を差し引いた金額となります。購入時の価格が不明である場合は売却価格の5%として計算することとなりますので、不動産購入の際は取得したときの金額についての資料を保管するようにしてください。

譲渡費用とは、その不動産を売るために直接かかった費用です。不動産屋さんに支払う仲介手数料などや、売買契約書に貼る印紙税などをいいます。

譲渡所得税は、他の所得と分離して行われます。売却した不動産は5年を超えて所有していた場合、長期譲渡所得となり、税率は20.315%となります。所有期間が5年以内の場合は39.63%となります。

税率が倍近く違いますので、5年を超えてから売却したほうが有利であることは知っておいてください。

なお、この所有期間の判定は譲渡年の1月1日で判定されます。1月に売っても12月に売っても1月1日で所有期間を判定される点は要注意です。売却する際はくれぐれもご注意ください。

相続させる場合、賃料収入にかかる税金

収益物件を相続させる場合、賃料収入にかかる税金は以下の通りです。

① 所得税(不動産所得=不動産収入-必要経費)

所得税率は5%から45%まであり、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税制度となっています。

② 住民税

不動産所得に対して10%と定率となります。

③ 個人事業税

アパートであれば10室以上など一定規模以上になると個人事業税が課されます。不動産賃貸業の場合、事業税は5%です。

④ 消費税

居住用建物の賃貸については非課税ですが、貸事務所や駐車場などは消費税の課税対象となり、前々年の課税売上が1,000万円を超えた場合、消費税の納税義務者となります。

⑤ 固定資産税

所有不動産に対し固定資産税がかかります。

いかがでしたでしょうか? おおまかではありますが、中古アパートを売却した場合、相続した場合について主に税金面から説明しました。

不動産賃貸業の大きな流れとしては、今後の日本は人口減少、空き家の増加等により、今後の不動産賃貸業は、物件の選別が始まるなどで以前より貸家経営が難しくなっていくことが予想されます。

賃貸物件を引き継いでいく人がいるかを含め、総合的に判断する必要があると思われますので、信頼できる不動産屋や士業等の専門家に相談されるのもよいでしょう。

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監修:宮路 幸人氏(多賀谷会計事務所 税理士 CFP)

監修:宮路 幸人氏(多賀谷会計事務所 税理士 CFP)

会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。

強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。

常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。


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