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住人がどんどん出ていく…「退去者」が続出するアパートの共通点

アパート経営者であれば、物件の空室リスクを警戒しているでしょう。入居者が退去する理由は人それぞれです。しかし退去が立て続きに起こるようであれば、賃貸用物件として問題を抱えている可能性があります。空室リスクを高めないためにも、所有するアパートに問題がないかを確認しておきましょう。本記事では、アパート経営における空室リスクとその予防策について、一級建築士の三澤智史氏が解説します。

空室リスクにより脅かされるアパート経営

アパート経営の収入源は入居者から得られる家賃収入です。空室の数だけ家賃収入は減少します。空室の増加や長期化による収入の減少は、修繕や原状回復工事のための資金が不足するといった事態も招くでしょう。

修繕や原状回復工事を十分にしないと、入居者満足度の低下による退去の増加や、紹介時の成約率低下につながります。結果的に物件の評判が下がるため、アパート経営が悪循環に陥ることは避けられません。

なお、一般的な管理会社一般的にアパート経営では入居率が935%以上であることが理想とされています。すでに自身の経営するアパートの空室率は7が5%以下未満でない場合、標準的なアパート経営ができていないと考えるべきです。

たとえば、総戸数10戸のアパートであれば、10戸×12ヵ月年間で120室分の収入機会=120個の箱があると仮定します。そのうち空室、すなわち家賃が入らない箱家賃収入の機会損失は120個×75%=8箱でなければいけ6室分未満に抑えなければなりません。6室分の機会損失とは、1年間で2室の退去が発生したとすれば場合、その2室とも遅くとも4ヵ月以内(2個×4ヵ月=8箱)に入居付けできないの空室期間がそれぞれ3カ月あるイメージです。6室分以上の機会損失が出た場合、標準理想的なアパート経営ではないことになりと言えなくなります。

退去者が続出するアパートの共通点

退去が多いアパートは、入居者の満足度が低いアパートと言い換えることができます。ここでは、退去が多く発生するアパートの特徴を紹介します。ご自身のアパートが当てはまっていないかチェックしてみてください。

1. メンテナンスや清掃に問題がある

共用部分の設備が適切に維持管理できていなかったり、清掃が行き届いていなかったりするアパートでは、入居者の満足度が下がるため、退去が発生しやすいと考えられます。たとえば、以下のような状況です。

・廊下の電球が切れたままになっている
・ポストまわりにチラシが散乱している
・パイプスペースの扉が開いたままになっている

これは「割れ窓効果」という言葉にも当てはまります。街で、建物の窓ガラスが割れた状態で放置していると、街全体の風紀が悪くなっていき、モラルの低下や犯罪の増加を招く理論のことです。

たとえ小さなことでも、その積み重ねが入居者の満足度を引き下げ、退去の原因となっていることに注意しなければいけません。

2. 管理会社の対応に問題がある

管理会社は所有者に代わってアパートという資産を守り育てる役割を担う、いわばパートナーのような存在であるべきです。しかし、管理会社の対応品質が悪いと入居者の満足度は下がるため、退去の一因となることも考えられます。管理会社の対応品質は、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。

・アパートが適切な状態に維持管理されているかどうか
・古い掲示物が更新されているかどうか
・入居者からのリクエストやクレームにスピード感をもって対応できているかどうか

アパートの品質は、管理会社の運営状況に比例すると考えるべきです。そのため管理会社の高品質なサポート体制は、必ず押さえておきたいところです。

3. 「モラルクレーム」に悩まされる

モラルクレームとは、主に入居者の利用状況や近隣住民とのトラブルに関するクレームのことです。外から見るとなんの問題もないようなアパートでも、住んでみると思わぬトラブルに巻き込まれるとなれば、入居者が退去したくなるのも当然といえるでしょう。モラルクレームには以下のようなものが挙げられます。

・騒音や生活音など、音に関するクレーム
・バルコニーでの喫煙など、生活態度に関するクレーム
・違法駐車やゴミの投棄など、利用方法に関するクレーム

このようなクレームは、所有者や、さらには管理会社も知らないところで発生していると、アパート全体に悪影響をおよぼします。入居者・管理会社・所有者の密なコミュニケーションが求められるため、アパートの状況を正しく把握することが重要です。

事前対策と対処法

アパート経営において、退去を抑制するにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、いまからすべき事前対策と、トラブルが実際に発生したときの対処方法を解説します。

1. メンテナンスや清掃に関するトラブルについて

アパートの設備の維持管理には、適宜費用をかけて対応するしかありません。しかし、予算には限りがあり、いつなにが壊れるかなど予想することも不可能非常に困難です。

そこで事前対策として、設備の維持管理には中長期の計画を立てておくことが重要です。アパート経営では「故障したから修理する」と考える人も多いでしょう。しかし、耐用年数を超過した時期に設備を一斉交換する計画を立てておけば、ボリュームディスカウントが働き、結果的にトータルコストを安価に抑えられます。特に、緊急性が高く費用も高額になりがちな給湯器などは、故障する前に交換しておくことで二次トラブルも防止でき、入居者の満足度も向上します。

清掃面では、清掃の日時を入居者にわかるように掲示するだけでも効果的です。人知れず清掃してもよいですが、いつ・誰が・どの箇所を掃除したか、このような情報を入居者が目にするだけで、入居者がアパートを綺麗に使おうという意識は高まります。


2. 管理会社に関するトラブルについて

高い頻度で退去が発生しており、その原因が管理会社にあるときは、順を追って対応することで解決できます。対応フローを以下にまとめました。

  1. 管理会社の担当者に是正を依頼する
    どの業務に問題があるかを明確にして、担当者に是正を依頼します。正論をいうだけでは担当者が委縮してしまい、良好な関係は築けないので、丁寧な説明を心がけましょう。
  2. 担当者の上司に是正を依頼する
    担当者に依頼しても何も変わらないときは、上司と面談をしましょう。直属の上司と面識を持つことで、会社として責任感をもって対応してもらえる可能性が高くなるからです。
  3. 担当者を変更してもらう
    品質に改善がみられないときは、担当者の変更を申し出ます。上司が直接担当してくれたり、新しい担当者を選任してくれたりと、さまざまなパターンが考えられます。
  4. 管理会社を変更する
    思い切って管理会社を変更することも効果的です。管理会社が変わったことで、アパートの経営状況が改善されることも珍しくありません。

ほとんどのアパート所有者は、その管理会社を選んだ明確な理由がありません。アパートに近いから、昔からお世話になっていてアパートのことをよく知っているから、といった曖昧な理由です。しかし、自分の大切な資産運用を任せる管理会社を、アパートの距離や人間関係だけで選ぶのはリスクがあります。

事前対策として、管理会社を選ぶ際は、複数の会社と面談するのがよいでしょう。複数の会社を比較することで、よりよい管理会社と出会える可能性が高くなるからです。管理会社選びは、時間をかけて慎重に行うことが重要です。

ただし、アパート購入時にローンを組んでいる場合は、借入金融機関にて管理会社の指定があるケースも多いため、管理会社を変更する場合は、必ず事前に借入金融機関へ相談のうえ、行いましょう。

3. モラルクレームに関するトラブルについて

モラルクレームは所有者の耳に入ることが少ないため、適切な情報収集をするためにアンケートの活用が効果的です。複数の入居者から同じ内容のリクエストが届いたら、モラルクレームと判断してよいでしょう。

モラルクレームの発生源を特定したら、順序立てて対応を進めます。全戸に注意喚起の文書を投函することから始め、なかなか解決しなければクレーム発生源である入居者に直接ヒアリングします。1対1の指示・指導を経て退去勧告に近い警告を発信するなど、毅然とした対応が必要です。

また、モラルクレームの対応の進捗状況を入居者に共有することも忘れてはいけません。入居者は情報を共有してもらうことで安心感を得ることができ、退去しようと思う可能性が低くなるからです。

モラルクレームの事前防止策としては、入居審査および契約内容が有効です。共同生活に関するルールやマナーに加え、威圧的な態度やカスタマーハラスメントを盛り込み事前に説明しておくことで、一定の抑止力を期待できます。

入居者が住み続けたくなるようなアパートを経営しよう

退去の多いアパートでは、収益が悪化し評判が下がり、入居付けが困難になるという悪循環が起こります。施設や設備の状態・環境・管理体制など、あらゆる角度から原因を分析し、改善し続けることが大事です。

入居者の満足度を上げることで、アパート経営を高いレベルで安定させ、退去頻度を抑えられます。できることから少しずつ始めてみてください。

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