不動産投資の確定申告…税理士が解説する「最新情報」と「注意点」
2024年1月~12月分の不動産所得に対する確定申告期間は、2025年2月17日(月)から3月17日(月)まで。不動産投資を行っている人は、この期間に漏れなく確定申告を行いましょう。確定申告は面倒な手続きとイメージされる人も多いかもしれませんが、適切な手続きを行うことで、税金の過剰な支払いを防ぎ、キャッシュフローを健全に保つことにも繋がります。本記事では、MK Real Estate 税理士事務所の、元国税調査官で自らも不動産投資を行っている川口誠税理士が不動産投資家の確定申告のポイントについて解説します。
不動産投資家にとっての確定申告
不動産投資家にとっては損益計算も重要ですが、キャッシュフロー計算も大切になってきます。なぜでしょうか。毎月の家賃から借入金を返済してお金を残していかないと、月単位のキャッシュフローがマイナスになり、手出しが生じてしまうからです。この借入金の返済は確定申告の損益計算に反映されません。
ただ、確定申告は損益計算に基づき税金というキャッシュアウトを確定させる作業ですので、年単位のキャッシュフローを考えると、最終的には確定申告まで考える必要があります。その確定申告の中で、不動産投資家にとって最も大きな経費は減価償却費になります。
借入金の返済額は物件購入時の融資審査で、融資額、返済期間、金利によって決まります。そして、減価償却費の金額は購入する物件の築年数(残存年数)によって計算することが可能です。
つまり、物件購入時にキャッシュフローの予測を立てることが可能であり、確定申告はその予測を最終的に確定させる作業であるといえます。筆者は、不動産投資家にとってこの予測を立てることが重要であり、予測を立てることができるのが不動産投資のメリットのひとつと考えています。
確定申告はその後の不動産投資にも影響してきます。今後さらに不動産投資で規模を拡大していくには、金融機関から融資を受ける必要があり、金融機関に確定申告書を提出します。
確定申告書は金融機関の融資判断に影響する大切な資料です。不動産投資家も経営者同様に、決算書の大きい数字だったり、前年と比べ増減が著しかったりする要因を知って、説明することができるようにしておいたほうがよいといえます。金融機関はそれができない投資家と比較し、できる投資家に融資をしたいと思うのではないでしょうか。
不動産投資家が確定申告を行ううえでの注意点
申告期間
令和6年分(2024年分)の確定申告の期間は、2025年2月17日(月)から2025年3月17日(月)になります。この日までに、確定申告書の提出と納税をしないと加算税や延滞税がかかってきますので、期限に慌てることがように余裕を持って済ませましょう。税務署の相談会場は期限間際に混雑し、近ごろは整理券が必要になっています。
なお、 還付申告の場合には、年を明けて1月1日からすでに行うことができますので、忘れないうちに申告するのもよいでしょう。間違いに気づいた場合には、3月17日まであれば、再度申告をすることによって訂正することができます。
家賃収入の計上時期
家賃収入の計上時期については意識しないと誤るので注意してください。不動産投資家の家賃収入は、賃貸借契約により支払日が定められている場合には入居者の家賃支払日に計上することになっています。賃貸契約書を見てもらうとわかりますが、来月分の家賃を当月末までに支払う契約が一般的でしょう。つまり、来年1月分の家賃は12月末までに支払われることになるため、今年の収入に計上する必要があります。
ただし、帳簿書類を作成して、年末に支払われた家賃を前受収益に計上し、翌年に収入として振替計上するのであれば、来年の収入に計上することが認められています。年分がずれていずれ収入に計上されるのでそれほど問題視しなくてもよさそうですが、確定申告は期間損益に基づいて行いますので、原則として、不動産投資家の家賃収入は支払ベースで計上することになります。
青色承認申請書の提出期限
青色申告をする場合には、開業日から2ヵ月以内に申請書を提出することによって、開業年分の申告から青色申告が適用されます。2ヵ月を過ぎた場合には、青色申告をしようとする年分の3月15日までに申請書の提出が必要です。つまり、令和8年(2026年)に申告書の提出を行う、令和7年分(2025年分)の申告から青色申告をしようとする方は、今回の令和6年分(2024年分)の確定申告書の提出期限に合わせて申請書も提出する必要がありますので、忘れないようにしてください。
今年特に注意すべき「定額減税」
不動産投資家に限りませんが、今年から所得金額が1,805万円以下の人は、本人含めた扶養親族等の数に応じて1人につき3万円の定額減税の適用が受けられます。確定申告書に記載漏れがないようにしてください。
確定申告を活用して、税負担を抑えるには
不動産投資家が行うことができる所得税の負担を抑える方法は、それほど多くありません。期中であれば、必要な経費を計上する等、まだ方法はあります。しかし決算が終わっていると、遡って税金対策をすることができません。
そのなかですべきこととしては、経費の計上漏れの確認です。プライベートの銀行口座やクレジットカードを不動産投資にも利用していると、プライベートの経費と混同されてしまいます。家賃は管理会社からの通知によって把握することができますので収入が漏れることは考えにくいですが、経費は漏れることがあります。1年を通して経費の拾い漏れがないかどうかを改めて確認してみてください。
手帳やスケジュール表で自分の行動を振り返ることによって、「このとき、こんなことをしていたからこんな経費がかかっている」「ここへ行った交通費が入っていない」など、思い出すはずです。また、時間があるようでしたら、すべてのプライベートの銀行口座照会やクレジットカード明細をいま一度確認してみるのもよいでしょう。
また、物件を購入した年であれば、経費に計上すべき支払いが資産計上されていないかどうかを確認してみてください。資産計上すべき支払いとしては仲介手数料、固定資産税の精算金がありますが、不動産取得税、登録免許税、司法書士の登記費用、融資事務手数料、火災・地震保険料、収入印紙代、管理費・修繕積立金の精算金は経費になります。
減価償却を踏まえた不動産投資を
確定申告時の注意点や決算終了後の税負担を抑える方法について紹介しました。
冒頭で述べたように、不動産投資家にとって最も大きな経費は減価償却費であり、その金額が税金の計算に大きく影響してきます。今後不動産投資をしていくうえでは、築年数(残存年数)を考えて物件を購入し、計画的に減価償却費を計上していく視点も持っておいたほうがよいかもしれません。
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