それ、違法です…不動産投資家が「宅建業法違反」になるケース【弁護士が解説】
2025年3月、知事の免許を受けずに土地や建物の売買を行った疑いで不動産会社の元社長が逮捕されました。この事件は、不動産取引における宅地建物取引業法(宅建業法)の重要性を改めて認識させるものです。不動産投資家の中には、宅建業法に触れる行為を意図せずに行ってしまうケースも少なくないようで……。本記事では、不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が、宅建業法の基本的なルールと、不動産投資家が注意すべき点について解説し、法的リスクを回避する方法について解説します。
宅建業法とは?
宅建業法とは、以下の1条に記載されているように、要は「高額な不動産の流通の安全性を免許制度によって保護しよう」という法律です。少なくとも昭和時代などは、ブローカーと呼ばれるような免許をもっていない人が暗躍し、不動産というと「あくどい世界」というイメージもあったかもしれません。近年でも「地面師」という言葉が有名ですし、法規制で悪徳な取引を規制しようとするのが宅建業法です。
(目的)
第一条 この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もって購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。
そして、宅建業法の対象となるのが以下の2条2項です。初見だとなかなか読みづらい条文でしょう。わかりやすくまとめると、「宅地、建物の売買を業として行うもの」と、「宅地、建物の売買と賃貸の仲介を業として行うもの」が宅建業です。
第二条2項
宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう
具体例でみていきましょう。自社で不動産を購入して売却を年間に何度も取引するのは、利益目的で取引を繰り返しており「業として」不動産売買を繰り返しているため、宅建業にあたります。賃貸マンションをあっせんして大家さんと契約内容をまとめるのが、「仲介」と呼ばれるものであり、「賃貸の仲介」ですから宅建業です。
他方、大家業として自分の所有している建物を賃貸に出すことは、宅建業の対象になりません。また類似のものとして、他人の賃貸の管理業を行うのは、別途賃貸管理業としての届出等が必要になりますが、宅建業ではありません。
「業として」というのは「反復継続して」と読み替えられる法律用語なのですが、一度きりではなく、何度も繰り返して利益目的でやっている取引をいいます。
たとえば、自宅を売却して老人ホームに入るというのは、一度きりの売買であり、「業として」には該当しないでしょう。他方、広い土地があるから分筆して複数個に分割し、売却するというのは、利潤を目的として複数回売買しているので、「業として」に該当する余地がでてきます。ただ、このあたりはボーダーラインともいえる微妙な行為です。
また「宅地」と限定されているように、ため池、山林などの建物を建てるような土地でなければ宅建業法の対象になってきません。ここで注意が必要なのは、登記の地目(種類)上、山林、畑などとされていても、建物を建てる用途で売買されるものは、「宅地」に該当するものだと考えることです。登記の地目だけで、形式的に判断するわけではないことに注意が必要となります。
不動産投資家も要注意…宅建業法違反で逮捕!? 免許が必要な行為と不要な行為
自己所有の不動産を貸す大家業は宅建免許がいらないのですが、投資用物件の売買を何度も繰り返すと、宅建業に抵触してきます。逮捕された事案も、取引回数が多く、明らかに宅建免許違反に該当するほどの取引回数だったことが問題でした。この点「業として」に該当するか、明確な回数の基準はありません。少なくとも裁判例上は、年間二桁以上の事案がほとんどですが、前述の広い土地の分筆事例のように、複数回取引になってくると宅建業法違反の余地が生じてくる、という点には留意が必要です。
逮捕の事案では、4回が正式な逮捕事実として報道されているようですが、余罪として50回前後の取引があるようで、そうすると、宅建業法違反で逮捕されてもやむなし、という感覚です。
特に近年は不動産相場の高騰もあり、一棟RCを建築しようとして土地を購入したが、相場があがったので、建築せずに土地の状態で売買してしまった、という投資家も増えています。こうなってくると取引回数が多くなるので、クリーンに取引を行うには、宅建業登録をして宅建業者として取引する必要がでてきます。
法的リスクを回避!不動産投資家が知っておくべき注意点
近年の不動産相場高騰の流れを受け、不動産投資家の宅建業者化は、非常に増えています。コンサルや不動産投資塾などでも、宅建免許を取得して合法的に不動産売買をしていこうという空気感があるようです。
ただ、注意も必要です。宅建業者になると単なる一般企業と異なり、宅建業者としての規制を受けます。特に重要なのが、契約不適合責任が免責できなくなり、「引渡しから2年」の責任を負う点です。そのほかにも重要事項説明の義務など、宅建業者としてきっちり行う必要が出てきます。
いまの不動産市場の流れとしては、相場の高騰により売買を繰り返すのもよい戦略かもしれません。しかし、相場が冷え込んだ際のリスクと宅建業者としての義務が重くなるという点の2つについては、注意して取引を進めていく必要があるといえるでしょう。
〈参考〉
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