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経営する賃貸アパート内で借主が「死亡」…物件価値が下がったが、遺族に「損害賠償請求」はできるのか?【弁護士の回答】

借主が賃貸物件の中で死亡してしまうと、発見が遅れて遺体が放置されてしまい、悪臭や汚れが室内に充満し、改修工事が必要となる事態や、事故物件として物件の資産価値が下がる事態などが想定されます。ではこうした場合に、貸主は遺族にその責任を追及し、損害賠償請求をすることはできるのでしょうか? また、事故物件となってしまった場合、貸主は告知義務を負うのでしょうか? 本記事では法律事務所Zの溝口矢弁護士が、賃貸物件内で借主が死亡した場合の責任追及について解説します。

借主が死亡した場合の責任追及

借主は、善良な管理者の注意をもって賃貸物件を保管する義務を負います(民法第400条、第601条)。

賃貸物件内で自殺や殺人があった場合には、社会通念上、嫌悪されることが通常であり、価値の下落を招く心理的欠陥・心理的瑕疵として(東京地方裁判所平成13年11月29日判決(平成13年(ワ)10209号)等)、当該保管義務に違反することになります。そのため、借主が賃貸物件内で自殺や殺人をした場合には、貸主は借主やその相続人に対し、賃貸物件の価値の下落分相当額につき、損害賠償請求をすることができます。

損害賠償請求ができるかどうかは「死の原因」による

同居する借主の配偶者が自殺した場合や借主が無断転貸をしていた転借人が自殺した場合にも、同様の理由から損害賠償請求をすることができたとした裁判例があります。また、会社が従業員の寮・社宅として賃借していた賃貸物件において従業員が自殺した場合については、会社に対する損害賠償請求を認めた裁判例と認めなかった裁判例があります。

他方で、借主が自然死・事故死した場合には、上記保管義務違反はないとされ、損害賠償請求が認められない可能性が高いです。住居とする物件内で人が衰弱や病気、事故により死亡することは、経験則上、ある程度の割合で発生し得るためです(東京地方裁判所平成19年3月9日判決(平成18年(ワ)第9928号・平成18年(ワ)第12562号))。もっとも、事実関係次第では、別途、原状回復費用を支払う義務を負う可能性があります。

このように、死の原因によって損害賠償請求ができるかどうかは異なっています。

事故物件であることの「告知義務」

国土交通省は、2021年10月、宅建業者が住宅取引を仲介するにあたっての宅建業法上の調査説明義務について解釈指針を示した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。

同ガイドラインによれば、特段の事情がない限り、自発的に事故物件か否かを(周辺への聞き込み、インターネット検索等で)調査する義務を負うことはなく、人の死に関する事実の発生を知った場合には、取引相手方の判断に重要な影響をおよぼすと考えられるものについて告知義務を負うとされています。

また、人の死に関する事実の発生を知ったとしても、

  • 自然死や不慮の死(転倒事故等)の場合
  • 日常生活で使用する必要がある共用部分で発生した自然死や不慮の死以外の死、および特殊清掃等が行われた自然死や不慮の死が発生してから3年が経過した場合
  • 日常生活で使用する必要がない共用部分で発生した自然死や不慮の死以外の死、および特殊清掃等が行われた自然死や不慮の死である場合

上記3つに当てはまる場合には、告知義務を負いません。なお、裁判例でも自殺があったあと、一定期間は、自殺があったという事実を説明すべき義務があるとされています(東京地方裁判所平成23年1月27日判決(平成21年(ワ)第42818号))。

借主の死亡トラブルは事前にしっかり対策を

以上を簡潔にまとめると、賃貸物件における死の原因が、

  • 自然死・事故死等の場合には、損害賠償請求は認められない可能性が高いものの、その後の告知義務を負わない
  • 自殺等の場合には、損害賠償請求は認められる可能性が高いものの、その後の告知義務を負う

ということになります。

借主側の命の問題(特に②について)を貸主がコントロールすることは容易でないため、リスクが顕在化することを踏まえた対策をとることが有効な方法のひとつであると考えられます。

たとえば、無断転貸をしていた場合の転借人の自殺に関する損害賠償について、借主の保証人も責任を負うとされた裁判例があることから、賃貸の際に保証人を付けることは対策となり得るでしょう。

また、これまでに解説してきたことを踏まえつつ、法的に適切な対応を講じることも検討してみてください。個別具体的な事案に関する検討は非常に難しいので、専門家のサポートを受けることも一案です。

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。 弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。 知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。


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