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「害虫放置」は契約解除の理由にも…法的責任といますぐできる対策【弁護士大家の警告】

夏は、蚊、ゴキブリ、アリなど、さまざまな害虫が発生しやすい季節です。中古アパートで害虫が発生すると、入居者の不満に繋がり、退去の原因にもなりかねません。害虫に関する入居者からのクレームが、契約解除や損害賠償請求といった深刻な法的トラブルに発展するケースも少なくありません。本記事では不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が、法的視点を踏まえ、中古アパート経営における害虫トラブルについて解説します。

「害虫放置」は契約不適合責任・安全配慮義務違反になりうる!?

夏場に多いゴキブリやアリ、ダニなどの害虫は、単なる不快要素では済まされない場合があります。特に築古アパートでは、老朽化による隙間や断熱不良から、害虫が発生・侵入しやすく、入居者の生活環境に深刻な影響をおよぼすことも。このような状況が放置されたままだと、貸主である大家は「契約不適合責任」や「安全配慮義務違反」を問われる可能性もあるのです。

居住に適さないレベルでの害虫被害が確認されると、賃借人からの契約解除請求や損害賠償請求といった法的リスクに直面します。実際に「ゴキブリが大量に出るので即時解約したい」「ダニ被害で健康被害が出た」などの申し入れを受けたケースもあり、放置がトラブルの火種となることは明らかです。

害虫によって幼い子どもやペットが体調を崩した、といった入居者側の健康被害が根深い問題になることも多いです。また、害虫でもシロアリ等になってくると、老朽戸建てなどの安全性のリスクも生じてきますので、単なるクレームの域を超えて大きな問題となるケースもあります。

もっとも、害虫の発生が「通常の生活の範囲内」である場合、必ずしも大家側に駆除義務があるとは限りません。たとえば、コバエがでるとか蚊が多いなどでは、法的問題にまで発展しないことも多いです。問題はその程度と影響の大きさです。抽象的な表現になるのですが、この手の生活被害は騒音等と同じように「受忍限度を超えるかどうか」、程度の影響と大きさによって、法的問題か否かが変わってきます。

苦情を受けた際には、現地確認と専門業者の意見を踏まえ、社会通念上、日常生活の範疇か異常な状態なのかを見極め、適切に対応することが求められます。法的リスクを最小限に抑えるためには、早期の対応と適切な判断が不可欠です。

トラブルを未然に防ぐための対策

害虫トラブルを防ぐうえで最も重要なのは、入居者のクレームを受けてから慌てて動くのではなく、「予防的対応」を講じておくことです。とりわけ築古物件では、構造上どうしても害虫が入り込みやすいため、定期的な点検と計画的なメンテナンスが不可欠となります。

まず有効なのが「定期的な専門業者による害虫点検・防除」です。予防的な消毒作業は費用対効果の高い投資であり、「管理が行き届いている物件」という印象を入居者にも与えます。また、入居前の室内クリーニング時に簡易的な防虫対策を施しておくことも、第一印象を左右するポイントです。定期的なコストがもったいないと感じるかもしれませんが、一度害虫が大量発生してしまうとその清掃、駆除費用が高額になることもあり、小さい火種のうちから、コツコツと対処しておくに越したことはありません。

さらに、クレームがあった際の「初動対応の迅速さ」も重要です。たとえば、苦情受付→現地確認→業者手配→処置完了の一連の流れを整理しておけば、対応の遅れや対応漏れを防ぎ、入居者との信頼関係を損なわずに済みます。問題の連絡から初動対応が早いか遅いかで、入居者側のクレーム感情が大きく左右されます。

物件情報シートや入居時説明書に「築古物件では虫の侵入があり得ること」「対応方針」などを明示しておくことも、のちの法的トラブルを予防する観点から効果的です。貸主としての姿勢を示すことで、多少のトラブルであっても話し合いによる解決を図りやすくなります。

現に、建物の裏がため池や、原っぱなどで虫が出やすいなどは、入居前に説明しておけば、「そういう特性の物件だ。先に説明した」という話になりますが、あとから知れば「こんなに虫がでるなんて聞いていない!」とトラブルにつながりやすくなってしまいます。

効果的な害虫対策の具体例

害虫トラブルを本気で防ごうとするなら、「場当たり的な対応」ではなく、具体的かつ継続的な対策が必要です。

まずは「外部からの侵入経路を塞ぐ」こと。築古物件では、床下通気口や玄関ドアの隙間、給排水管周辺などから虫が入りやすいため、専用のパテや防虫ネットでの封鎖は基本です。

次に、「定期的な薬剤散布」。年に1~2回、プロの業者に依頼して物件全体に殺虫・忌避処理をしてもらうだけで、入居者からの苦情は格段に減ります。共用部やゴミ置場、排水周辺は重点的に処理し、室内に入らせない“バリア”をつくるイメージです。

また、入居前後の「情報提供」も重要なポイントです。「虫が出た場合はまず管理会社へご連絡ください」「一定の虫の発生は地域特性上やむを得ない場合もある旨」を明記した案内文を設けるだけで、入居者の受け止め方が大きく変わります。

さらに、もし害虫発生の報告を受けた場合は「迅速な現地確認」と「写真・記録の保存」がトラブル予防になります。感情論ではなく、客観的な情報をもとに対応することで、法的リスクを抑えつつ、信頼関係を保つことができます。

害虫対策は、予防・対応・説明の三本柱を意識することで、賃貸経営の安定と入居者満足度の向上につながるでしょう。

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

専門は不動産法務、相続分野。実家の不動産トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。


クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続のトラブルについて、自分ごとのように解決策を提案できることが何よりの喜び。


さらに不動産・相続法務に特化した業務に注力するため、2020年4月1日、不動産・相続専門事務所として山村法律事務所を開設。


山村法律事務所ウェブサイト https://fudousan-lawyer.jp/


不動産大家トラブル解決ドットコム https://fudousan-ooya.com/


著者登壇セミナー https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098


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