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真夏のジメジメを乗り切る!中古アパートの「高温多湿対策」完全ガイド【弁護士が解説】

たかがカビ、されどカビ――経営するアパートの高温多湿が原因となり、オーナーが入居者からクレームを受けたり修繕を求められたりするケースは少なくありません。なかには入居者の健康を害し、損害賠償請求に繋がる可能性もあり得ます。本記事では、法的視点を踏まえ、中古アパートの高温多湿対策と管理の重要性を法律事務所Zの溝口矢弁護士が徹底解説。訴訟リスクを回避し、安定した賃貸経営を実現するための知識を身につけましょう。

入居者が放置した「カビ」「結露」も損害賠償リスク?

入居者が、

〇賃貸物件の結露やカビが発生した部分について修繕を求める

〇退去時の原状回復費用の負担を拒否する

〇カビが原因で健康を害したことについて損害賠償を請求する

などといった対応をしてくるケースがあります。

まず、賃貸物件において発生した結露やカビについて、オーナーがすべての責任を負わなければならないわけではありません。入居者が結露を放置する、換気・清掃をしないなど、賃貸物件の利用の仕方に問題があることで発生したカビや結露については、オーナーが責任を負う必要はありません。

他方で、賃貸物件に構造上の問題があるような場合には、オーナー側で修繕する、一定額の損害賠償を行うなどの対応が必要となる場合があります。もっとも、修繕する場合は問題が解決できる程度の常識的なもので足ります。過度な修繕要求(たとえば、一般的な広さの部屋に除湿のための最新のエアコンを3台設置するような要求)に応じる必要はありません。また、損害賠償についても、基本的にはカビによって入居者が被った費用(治療費、入居できなかった期間の一般的なホテル代等)で足ります。

以上を踏まえますと、入居者から結露やカビに関する主張があった場合、オーナーは、その発生原因がどのようなものであるかを正確に把握し、自身が責任を負うべきかどうか、責任を負うとしてもどの程度まで対応する必要があるのかについて、慎重に判断する必要があるといえます。そのうえで、適切な対応を考えていきましょう。退去時の原状回復にあたってカビの問題が生じた際は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html)が参考になります。

なお、法的にオーナー側が責任を負うべきでないと判断した場合でも、理屈を振りかざして一刀両断してしまえば、かえってトラブルが大きくなり入居者との関係が悪化してしまうことも考えられます。そこで、このような場合であっても、オーナー側がサービスとして特別に修繕費用を持つといった対応を行うこともあるようです。

慰謝料請求をされたら?

入居者からカビの発生を理由に慰謝料請求をされることがあるかもしれません。しかし、カビの発生に関しては、必要な修繕や損害賠償さえ行えば、慰謝料の支払義務を負うケースは決して多くはないことを知っておきましょう。

慰謝料は心理的・精神的な損害を指しますが、法的には、物理的なカビの問題が解消された時点で、心理的・精神的な損害もなくなったと評価されるのが一般的であるからです。そのため、オーナー側が慰謝料請求に応じる必要がない可能性が高いケースが多いと予想されます。

トラブルを未然に防ぐための管理

賃貸物件の構造上、ある程度の結露やカビの発生が予想される場合には、

〇賃貸借契約にあたって、特定の箇所につき入居者に説明を行い、理解を得て管理方法や修繕費用の持ち方について特約を設ける

〇結露・カビ発生防止の物理的な対策を講じる(壁と備え付け家具の密着を避け、風の通り道をつくる等)

といった対応が考えられます。

また、賃貸物件の点検等は定期的に行い、点検箇所や問題がなかったことを記録に残しておくとよいでしょう。点検の時点で問題がなかったことが記録になっていれば、賃貸物件の構造上の問題(オーナー側の責任)であるとされる可能性を低くすることができます。

構造上、結露やカビが発生しやすいポイントとしては以下の点が挙げられます。参考までに、注意してください。

・日光や換気が行き届かない場所(対策:除湿剤・防カビ剤の設置)

・断熱性能の低い壁や窓(対策:予算の範囲内で壁や窓を取り換える)

・水まわり(対策:オーナー側で定期的な点検を行う)

・雨漏り/水漏れが生じそうな場所(対策:賃貸借契約締結前に点検を行う)

トラブルを未然に防ぐためには、契約時の特約設定や、物理的な対策(換気経路の確保など)、そして定期的な物件点検とその記録が重要です。特に、日当たりや断熱性能、水回りなど、カビ・結露が発生しやすいポイントは注意して管理しましょう。

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

溝口 矢氏(法律事務所Z アソシエイト・東京オフィス 弁護士)

2016年慶應義塾大学法科大学院卒業後、ベンチャー企業でのマーケティング等に関与。 弁護士登録と同時に入所した弁護士法人Martial Artsでは、不動産分野、債権回収を中心に多数の一般民事事件や中小企業法務を取り扱った。不動産会社内で企業内法務にも携わる。 知的財産分野に関心があり、エンターテインメント関係の相談対応も手掛けている。


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