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「これ、もしかして詐欺?」と気づいたときにはもう遅い…中古アパート投資、「サクラ入居」の法的代償【弁護士が解説】

中古アパート投資の検討中、魅力的な提案に「これ、もしかして詐欺?」と直感が働いたことはありませんか。不動産投資にまつわる不正は、単に騙されるだけでなく、一度契約を終えてしまえば法的な責任追及が極めて難しく、巨額のローンだけが手元に残るという取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。本記事では、中古物件の取引で横行しやすい詐欺スキームの正体と、その対策を山村暢彦弁護士が解説していきます。

事例に学ぶ「サクラ入居」の巧妙な手口

都内近郊で中古アパートの購入を検討していたAさんは、「満室稼働・高利回り」を謳う物件を紹介されました。レントロール(不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもの)上は全室が入居中で、賃料も相場水準。仲介業者からも「優良物件」と強く勧められ、購入を決断します。

しかし、引渡しから数ヵ月で状況は一変します。入居者の退去が相次ぎ、半数以上が空室に。調査してみると、短期入居ばかりで、連絡先や勤務先も曖昧な入居者が多く、不自然な実態が明らかになりました。

いわゆる「サクラ入居」です。実際には空室が多い物件に売主の関係者等を一時的に入居させ、満室を装って販売する典型的な手口です。購入後に一斉退去が起き、収益構造は一気に崩れます。

もっとも、このようなケースでも直ちに詐欺といえるわけではありません。売主の欺罔行為や故意の立証は容易ではなく、「購入後に退去が続いた」だけでは法的責任を追及できない場合も多いのが実務の現実です。

だからこそ、表面的な利回りや入居状況に依拠せず、「実態」を契約前に見極める視点が重要となります。

「レントロール偽装」を見抜くためのチェックポイント

サクラ入居のようなスキームは、「満室」「高利回り」という魅力的な数字で判断してしまう投資家心理を突いてきます。しかし、実務上はレントロールの“数字”だけをみても、実態は判断できません。

重要なのは、その裏付けとなる資料や運用実態まで踏み込んで確認することです。まず確認すべきは、各入居者の賃貸借契約書です。契約開始時期が短期間に集中していないか、契約条件が不自然に統一されていないかなどは重要なポイント。また、敷金・礼金の授受状況や、実際に資金のやりとりが行われているかも確認すべきでしょう。サクラ入居の場合、形式上の契約はあっても、実際の金銭授受が伴っていないケースもあります。

さらに、入居者の属性にも注意してください。勤務先や連絡先が曖昧であったり、似通った情報が並んでいたりする場合は要警戒です。また、賃料の入金履歴とレントロールの内容が一致しているかを確認することも極めて重要です。帳簿上の数字だけでなく、実際の入金実績をみなければ、収益の実在性は判断できません。

加えて、入居時期の偏りも典型的なチェックポイントです。引渡し直前に入居が集中している場合や、フリーレントなどの条件が付されている場合は、短期退去を前提とした“みせかけの入居”である可能性も考えられます。

このように、レントロールは単なる一覧表ではなく、「その物件の収益構造を裏付ける資料」です。数字の良し悪しだけで判断するのではなく、その裏にある契約・資金・運用の実態まで丁寧に確認することが、詐欺的スキームを見抜くための重要な視点といえるでしょう。

「なにかがおかしい」という違和感レベルでも、契約前に立ち止まる

中古物件の検討において、「なにかおかしい」と感じたら、その直感を無視しないようにしましょう。実務上、違和感を押し切って契約してしまった場合、あとから法的に巻き返すことは容易ではありません。

特に注意すべきは、購入後に退去が相次いだとしても、それだけで直ちに詐欺が成立するわけではないという点です。売主側が意図的に虚偽の入居状況を作出したことや、購入者を欺く目的があったことを立証する必要があり、証拠が十分に揃わなければ、法的責任を追及できないケースも多くあります。

だからこそ重要なのは、「契約前に止まる」という判断です。一度契約してしまえば、あとは自己責任の領域が広がり、損失を取り戻すことは極めて困難になります。違和感は軽視せず、その段階で立ち止まり、確認を尽くすことが、不動産投資における最大のリスク回避策といえるでしょう。

決済後の後悔を防ぐ「リーガルチェック」の重要性

中古収益物件の取引においては、「契約してから考える」ではなく、「契約前にどこまでリスクを洗い出せるか」が結果を大きく左右します。特に、売買契約書や重要事項説明書には、売主の責任範囲や免責条項が細かく定められており、内容によってはあとから問題が発覚しても責任追及が困難になることが少なくありません。

弁護士が関与することで、こうした条項のリスクを事前に整理し、どの程度の法的保護が確保されているのかを客観的に判断することが可能になります。また、レントロールや関連資料との整合性を踏まえたうえで、「この取引に進むべきか」という判断材料を得ることもできるのです。

違和感を見過ごさず、必要に応じて専門家のチェックを入れることが、結果として大きな損失を防ぐことにつながります。契約前の一手間が、投資の成否をわける重要なポイントといえるでしょう。

収益物件とは「契約関係」そのもの

不動産トラブルは、購入後、すなわち「決済後」に法的責任を追及しようとしても、立証の難しさや手続コストの面から、極めて不利になるのが実務の現実です。そのため、契約前、遅くとも決済前の段階で、不審な点があれば必ず立ち止まって確認することが重要です。

とりわけ、利回りを前提に購入する収益物件は、単なる土地建物ではなく、「賃借人との賃貸借契約関係」そのものが商品といえます。高利回りという表面的な数字に、どのような実態が隠されているのか。裏付けとなる実態まで丁寧に確認することが、リスクを回避する防衛策となるはずです。

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

監修:山村 暢彦氏(山村法律事務所 代表弁護士)

専門は不動産法務、相続分野。実家の不動産トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。


クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続のトラブルについて、自分ごとのように解決策を提案できることが何よりの喜び。


さらに不動産・相続法務に特化した業務に注力するため、2020年4月1日、不動産・相続専門事務所として山村法律事務所を開設。


山村法律事務所ウェブサイト https://fudousan-lawyer.jp/


不動産大家トラブル解決ドットコム https://fudousan-ooya.com/


著者登壇セミナー https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098


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