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不動産投資の成否を左右する「物件選び」…プロが教える「良い建物」の見極め方

数ある不動産投資のなかでも「低コスト・高利回り」であるとして注目されている、中古アパート経営。中古不動産の目利きの専門家集団である一般社団法人レトロフィットジャパン協会の担当者によれば、「適切な修繕や管理が行われれば、中古アパートの耐用年数は65年程度まで延びる」といいます。とはいえ、適切な修繕や管理が行われている中古アパートと、そうでないアパートどのように見極めればよいのでしょうか。今回は、物件の具体的なチェック方法について伺います。

プロが伝授…「良質な物件」の見極め方

一般社団法人レトロフィットジャパン協会の担当者によると、購入を検討している中古アパートは、可能な限り実際に現場に足を運んで自分の目で確かめることが重要だそう。不動産業者は基本的にいいことしか言わないため、物件を見て気になる点があればどんどん質問する姿勢が大切です。

では、中古物件の目利きのプロは、いったいどのように建物をチェックしているのでしょうか。

担当者「私はいきなり建物に近づくのではなく、まずは少し離れた場所から物件を眺めるようにしています。建物の周りになにもなくその建物がポツンと建っているのであれば問題ないのですが、通常は住宅街にあるため、隣のアパートや住宅と比較することで、物件の様子やバランスなどがわかるのです。

たとえば維持・管理に関して、隣のアパートは築20年であってもきれいに修繕・管理されている一方、当該物件は築年数が浅いにも関わらず劣化が激しいとか、自転車置き場が乱雑だとか、ゴミ置き場が汚いなど……周囲の物件と比較することによって、アパートの管理状態がわかります。そのように第一印象をチェックするのです」

次は、建物に近づき、境界を確認するといいます。

担当者「隣家との境界を見て、隣から越境していないか、またこちらのものが越境していないか、という点を確認します。フェンスや植栽がはみ出していたりするとトラブルの元になるからです。アパートはたいてい周りに境界の杭などの印があるので、そこを見ます」

境界を確認したあとは、敷地内のチェックです。アパートオーナーの許可を得たうえで、建物をぐるっと1周回って「基礎」の状況を確認。同時に建物の後ろの境界も見ていきます。

担当者「基礎は建物を見るうえで最も重要なポイントですから、じっくりと時間をかけてチェックします。クラック(ひび割れ)があれば、クラックスケールという専用の定規で測ります。これはホームセンターなどでも売られています。0.2~0.3ミリ程度の通常のクラックであれば、ほとんど問題ないと思います。

生じているひび割れが『問題あり』として補修をしなければならない目安は、『幅0.5㎜以上のひび割れ、又は深さ20㎜以上の欠損が生じている状態、錆汁の発生や鉄筋の露出などの腐食している可能性が高い状態(※)』とされています。
※国土交通省:既存インスペクション・ガイドラインより

現代の基礎は、コンクリートの上にモルタルで仕上げをしています。かなりの厚みで仕上げているため、それが少し劣化してクラックができたとしても、構造体にクラックが生じているかは断定できません。

ただ、クラックが0.5ミリ以上あるなどかなりひどい状況の場合は、専門家に依頼してしっかりとした調査をしていただき、補修することが重要になります」

基礎のチェックの際は、モルタル仕上げの「浮き」も見ることがポイントだといいます。

担当者「『打診棒』という専用の道具を使ってコンクリートを叩くと、モルタルとコンクリートがピタッとくっついているところと、はがれかかって浮いているところで音が違うのがわかります。手で叩いても、浮いている場合はスカスカな音がするので一般の方もわかると思います」

基礎の次は、建物が傾いていないかを確認します。

担当者「表の道路から建物を目視し、周りの土間などにクラックはないか、不同沈下していないかなどを確認します。欠陥住宅の場合、構造体が傾いているのか、内装、仕上げ材が傾いているのかで深刻度が違ってきます。基礎が傾いている場合、内装を直しても建物は傾いたままです。基礎は問題なく、内装で大工さんが間違えたのであれば、修正すれば大丈夫です」

建物の傾きの次は、外壁の確認です。

担当者「手で触れるところは触ります。建物にはゴムのような『シール』と呼ばれるもので充填しているので、それが硬くなっていないか、触ったり目視したりして確認します」

チェックはさらに続きます。アパートの2階、3階まで上がり、上部の外壁を確認します。

担当者「外壁はきれいに塗装されていても、屋上防水がされていないことも少なくありません。雨水がかかるところは劣化が早いため、鉄骨階段や床の錆の発生に対して補修がされているかを見ます。バルコニーの下に雨漏りの跡があるケースもあるため確認したほうがいいでしょう。また、階段にゴミが落ちていないか、きれいに管理されているかもチェックしておきましょう」

「前オーナー」のメンテナンス状況を確認

ここまで中古アパートの物件チェックについて、建物を外側から見る際のポイントを説明してきました。

さらに大事なのは、現在のオーナーや管理会社が当該物件をどのように修繕・管理してきたかを確認することだと、担当者はアドバイスします。

担当者「建物の耐用年数を延ばすためには、修繕・管理が不可欠です。そのため、現オーナーや管理会社が修繕計画にのっとってきちんと管理していたのか、「修繕履歴」を確認することが重要となります。

ただ実際には、修繕履歴を残していない個人オーナーが少なくありません。建物の見た目はたしかに修繕されているのですが、それがいつ行われたのかが不明で、そのうえ部分的な修繕のみを行っているケースもあります。

しっかりした管理会社の場合、耐用年数を延ばすために建物は12年や15年おきにきちんと修繕してくださいとオーナーにお願いしているはずです」

中古アパートの仲介会社の場合、基本的に当該物件の修繕履歴は保持していないといいます。そのため、投資家は修繕履歴についてきちんと質問、確認することが重要です。

担当者「たとえば、築30年の物件で修繕工事を1回もしていない場合は、購入には慎重を期したほうがいいでしょう。ただ、基礎に問題がなければ、購入後にご自身で修繕を行い、15年目に再度行うという前提で、耐用年数を20~30年延ばすことは可能です」

今回ご紹介した中古アパートのチェックポイントは、レトロフィットジャパン協会の指標に基づく評価で、絶対的なものではありません。ただ、こうしたプロの見極め方を知っておくことで、「目利き力」を養うことが重要だといえそうです。

アパート経営オンライン編集部

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