「不動産鑑定」とは?査定との違いや費用、依頼すべきケースを不動産鑑定士が解説
「不動産鑑定士が行う鑑定」と「不動産会社が行う査定」は、いったいなにが違うのか、疑問に感じる不動産投資家も少なくないでしょう。そこで本記事では、不動産鑑定士にはどのような役割があるのか、依頼をするメリットなど、不動産投資家が知っておくべき不動産鑑定の基礎知識について30年間で6,800件以上の相続税申告・減額・還付実績を持つ「フジ総合グループ」の代表・藤宮浩氏が解説します。
不動産鑑定士の役割
「不動産鑑定士」と聞くと、なんとなくイメージはついても、具体的な業務内容をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
不動産鑑定士が行う「不動産鑑定評価」とは、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、社会情勢や不動産をとりまく環境、権利、法律関係などすべてを考慮したうえで、不動産の適正な価格を客観的に導き出すことをいいます。
土地には、実際に売買取引が成立した価格(実勢価格)に加えて、4種類の公的な価格があります。同一のものなのに複数の価格があるとややこしく感じますが、これはそれぞれ利用する目的が異なるため。どれが正解というわけではなく、すべて正しい価格です。実勢価格は、その時点での土地の適正な価格ということができますが、売主・買主の個別的な事情に左右されがちなため、異常値が出る場合もあります。
不動産鑑定士だけができること…「公示価格」の算出
そこで、一般市場での土地取引の指標として利用されているのが「公示価格」です。地価公示法に基づき、国土交通省が毎年1月1日時点の価格を決定し、3月に発表します。この「公示価格」とのバランスを図りながら、「固定資産税評価額」や「相続税評価額(路線価)」が決定されるため、影響力の大きい重要な数値です。
この「公示価格」を実際に算出しているのが、不動産鑑定士です。公的機関が、このような依頼を行うのは、不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」によって、不動産鑑定評価を行うことが認められている唯一の国家資格だからです。
不動産は1つとして同じものはなく、一般の商品に比べて適正な価格を導き出すのは非常に困難です。そのため、豊富な知識と経験を持つ不動産鑑定士の判断が必要になります。
不動産のプロとして…土地・建物を有効活用するためのアドバイスが可能
また、不動産鑑定士にはコンサルタントとしての顔もあります。依頼者は理由があって鑑定評価の必要に迫られているわけですので、その評価ニーズに応じて適切なアドバイスをすることが求められます。
不動産鑑定士試験には、評価実務に直結する「鑑定理論」に加えて、「民法」「経済学」「会計学」といった科目があります。地主さんや不動産オーナーさんの悩みを解決するにはこれらの横断的な知識が必要であり、悩みを解決するだけでなく、依頼者ご本人も気づいていない問題点を表面化させ、その解消や予防を図ることも、コンサルティングに含まれると考えています。
「不動産鑑定」と「不動産査定」の違い
「不動産鑑定」と似た用語に「不動産査定」がありますが、不動産鑑定と不動産査定は別物です。
「不動産査定」とは?
「不動産査定」は、不動産会社などが対象不動産を売却する際に売値を決めるために行うもので、そこで算出される推定売却価格は、あくまでも査定した不動産会社が値付けした価格でしかありません。そのため、不動産の価値を調べる際の参考価格にはなりますが、公的に認められる価格ではありません。
「不動産鑑定」とは?
「不動産鑑定」は、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づいて評価を行うもので、そこで算出される不動産鑑定評価額は、裁判上の評価として用いられるなど、公的に認められる価格になります。
不動産鑑定の依頼費用は、評価対象不動産にもよりますが、数十万円程度かかることが一般的です。
不動産鑑定評価が役立つケース
不動産鑑定評価が役立つ場面は多くあります。
たとえば、「親族間での売買・交換」、「賃貸経営の法人化に伴う法人への売却」、「遺産分割の際の代償金算出」等が代表的です。そのなかでも特に、遺産分割協議における時価の算定で活用される場面が多いです。
不動産鑑定評価は遺産分割協議で具体的にどう活用される?
相続権は民法で定められている一方、相続する財産は相続人同士の話し合いによって決めることができるため、各相続人が納得していれば、1人の相続人が全財産を取得することも可能です。
しかし遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、遺産のわけ方に納得しない相続人が1人でもいれば協議は成立しません。
路線価や固定資産税評価額をもとに遺産分割協議を行う方法もありますが、それらの価額は、相続税や固定資産税を課すための評価額ですので、実勢価格とは乖離していることもあります。
相続税の土地評価は、路線価方式または倍率方式で計算するのが原則ですが、路線価方式等で算出した評価額が実勢価格と乖離していると認められる場合には不動産鑑定評価が有効な場合があります。
「実際にはこんな値段では売れないのに相続税の評価額がとても高い」など、お困りの方はまず一度、不動産鑑定士に相談してみることをおすすめします。
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