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日経平均株価、史上最高値は「不動産投資」にとって追い風となるか?【不動産のプロが解説】

日経平均株価が2024年2月22日、34年ぶりに最高値を更新。その後もさらなる最高値を更新した。かつて平成バブルを経験した投資家からは期待の声も上がるなか、今後、不動産市況にどのような影響があるのか? 不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏が解説する。

日本経済低迷も、株価は急上昇

株価が高騰している。2024年2月22日、日経平均株価終値は1989年大納会での終値3万8,915円を上回る3万9,098円を記録。その後も上昇傾向にあり、3月22日(著者執筆時点)で4万888円と史上最高値を更新し続けている。

「失われた30年」といわれるように日本経済の低迷が続くなか、株価が急上昇を続けることを訝る声も多いが、春闘において大手企業を中心に高額のベースアップ(ベア)引き上げ回答がなされ、雰囲気でいえば景気のいいニュースが並ぶ昨今である。

しかし、一般庶民の感覚からすれば、日本経済が回復軌道に乗っている実感は薄いのが現状だ。暮らしが上向かないなか、消費者物価指数は、24年2月時点で対前年同月比2.8%の上昇を記録。対前年同月比で30ヵ月連続の上昇を続け、日本銀行が目論む物価安定目標である2%を23ヵ月連続で上回っている。

値上がりが続く不動産価格

こうした状況下において、不動産市況に目を転じると、都市部を中心に不動産価格の上昇は著しく、2014年以降、日本銀行が繰り出した大幅な金融緩和の恩恵を受け、大都市部を中心に不動産価格は高騰。特に首都圏(1都3県)での新築マンション平均価格は2023年で8,101万円、㎡あたり122万6,000円となった。

日本人の2人以上世帯の平均年収が437万円(2018年)であるから、首都圏で生活しようとする人が新築マンションを手に入れるためには年収の18倍以上の負担を余儀なくされる事態となっている。

株価と不動産価格は連動する。株価は2012年末終値で1万395円であったから、現在は約4倍に値上がりしたことになる。同期間での首都圏新築マンション平均価格は、2012年で戸当たり4,540万円、2023年には同8,101万円であるから、1.78倍になったことになる。

同様に国土交通省発表の不動産価格指数(商業用不動産、2010年=100)におけるオフィスの指数をみると、2012年の99.6に対して2023年第四四半期で165.5。1.66倍の上昇だ。

主要企業における株価のみの平均である日経平均に対して、不動産データは地域の範囲も広く、単純な比較は難しいが、全体的に株価と不動産価格がおおむね連動している様を伺い知ることができる。

連動の背景

株式と不動産が連動して上昇していることの背景には日本銀行が継続してきた大規模金融緩和がある。

特に2016年以降に実施されたマイナス金利政策によって、金融機関は日銀に金を預けることに利がなくなり、市中に供給せざるを得なくなった。結果として、本来は企業の投資に使われるはずの資金が大量に株式、不動産マーケットに流入したのだ。

日本銀行の資料によれば2013年時点での金融機関による不動産業者向け貸付残高は約60兆円だったが、2022年には90兆円と1.5倍の規模に膨らんでいる。このような金融緩和施策によるマネーの供給が2つの市場に大きな影響をもたらしたことは明確である。

不動産マーケットの展望

では、今後の不動産マーケットはどのように推移するのだろうか。日本のみならず、今後の世界経済はインフレ傾向が強まると予想される。コロナ禍においては日本のみならず世界各国が金融緩和を行い、大量のマネーがマーケットに流入したことによって、アメリカ、イギリスをはじめ先進諸国の物価は高騰を続けている。

不動産マーケットにおいては、この影響が建設費に表れている。建設費の値上がりは特にここ数年で顕著になっている。国土交通省の建築費デフレーターによれば、2015年を100として、2023年はマンションなどの鉄筋コンクリート(RC)造で126.4、オフィスなどの鉄骨(S)造で131.6と大幅な上昇が続いている。

原因としては、

① 建築資材の多くが輸入品であり、世界的に建設需要が伸びるなか、資材が高騰していること
② 国内の低金利政策による円安で、輸入資材価格の高騰に拍車をかけていること
③ ウクライナ、ガザなどの国際紛争によるエネルギー価格の上昇による運搬コスト、電気代などの値上がりが続いていること
④ 世界的な半導体不足による設備機器の価格上昇、納期の遅れ
⑤ 国内建設業従事者の減少、人口減による人材不足

の5つがある。いずれも今後の経済環境を考えるに改善しない、むしろ悪化する可能性のあるものばかりである。

建設費のアップは地価の上昇を含めて、不動産の投資利回りを低減させる。一方でインフレ引き締めのために、先進国では金利の引き上げが相次いでいる。国内でも日本銀行によるゼロ金利政策は解除され、今後は利上げに向けての環境整備が始まる。これらの動きをみるに、不動産投資利回りを改善させるにはひとえに賃料収入の上昇を目指すしかないということになる。 

今後の不動産投資で成功するためのポイント

経済理論的には、おそらく賃貸マンション、アパートなどの賃料は今後上昇に向かうことが想定される。だが一方で日本の場合、人口減少、高齢化の波にさらされ、また849万戸の空き家のうち賃貸用の空き家戸数が432万戸と全体の半数以上を占めている。

日本の人口は2030年以降、減少のスピードが高まっていくこと、年間の出生数は、2016年に動態統計を取り始めた1899年以降で初めて100万人割れをしてからさらに落ち込み、75万8,000人(2023年)となっている。今後は若年人口の減少を前提に需要動向をよく把握して、中長期的に十分採算が見込まれるエリアでの貸家着工を計画すべき時代に入ったということもできよう。

土地の有効活用としてのマンション、アパートなどの賃貸住宅経営は資産ポートフォリオの分散や相続税評価額の圧縮など多くの効果が期待できる手法だ。今後もその効果は変わらないものの、これまで以上に投資にあたってマーケティングの重要性を認識すべきである。

どんな商売を行うのでも、顧客にどのような商品、サービスを提供するかを考えるのが基本だ。不動産活用、運用を行うにあたっては知恵の部分については、専門家などを上手に活用し、投資リスクをしっかりと検証したうえで安心な未来生活を構築していきたいものだ。

牧野 知弘(不動産事業プロデューサー)

牧野 知弘(不動産事業プロデューサー)

1959年生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン コンサルティング グループ、三井不動産などを経て、オラガ総研代表取締役兼全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。著書に『空き家問題』『不動産激変』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』など。


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