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路線価は「読み方」で大きく変わる…中古アパートオーナーの税金と資産価値【税理士が解説】

9月分田中先生_カンバン

毎年7月に発表される「路線価」。中古アパートオーナーとして、どのように見て、どのように活用していますか? 路線価は、あなたの所有する不動産の価値を測り、将来の税金や資産戦略を大きく左右する重要な指標です。本記事では、相続税・贈与税の評価基準となる路線価がそもそもなにを意味し、どこをみて、どのように読み解けばよいのかを、税理士法人メディア・エスの田中康雄税理士がわかりやすく解説します。

路線価とは?路線価図を「読む」基礎知識

そもそも路線価とは、その土地が面する道路上に付された標準的な宅地の1m2当たりの価額のことです。国税庁が毎年7月にその年度分の路線価を公表しています。

相続税や贈与税の申告では、土地の評価は時価によることとされており、その評価額の基準の一つとなるのが路線価です。つまり、路線価によって評価した土地の価額は、あくまでも相続税等を計算するための税務上の時価であり、実際にその土地が売買される際の取引価格とは乖離します。

しかし、路線価は土地取引の際の参考値となる地価公示価格等の80%程度を目途に設定されているため、路線価は自身が所有している土地の資産価値を測るための尺度の一つとして活用することができます。

また、アパートオーナーにとっては、その不動産を所有し続けることで、相続人がどれくらいの相続税を負担することになるのかということも気になるところです。相続財産のなかでも不動産の価額が占める割合は大きくなるため、毎年発表される路線価を使って自宅やアパートの敷地を評価し、相続税のシミュレーションを随時更新するためにも路線価は欠かせません。

それでは、現在所有している土地の路線価がどれくらいなのか。これを調べるには、まず国税庁のホームページからその土地が所在する地域の路線価図を探します。路線価図は、ゼンリンの地図をベースに作成されているため、自己所有する物件であれば、そこから土地の場所を特定することはさほど難しいことではないでしょう。

そして、その土地の前面道路に伸びる矢印上に付された数字をみつけていきますが、それが路線価であり、千円単位で表記されています。たとえば、「300D」と表示されていれば、その道路に面した土地の1m2当たりの評価額は300千円(=30万円)ということになります。

なお、数字の後ろに付されている記号(この例ではD)はその地域の借地権割合を表しています。その土地がアパートなどの敷地になっている場合には、貸家建付地として相続税評価額を計算する際に必要となる記号ですが、具体的には次に確認します。

路線価で所有地を計算してみる

ここまで、アパートオーナーが路線価を活用する主な目的として、所有地の①資産価値の概算と、②相続税評価の2つを挙げましたが、路線価を使ってそれぞれ具体的に計算してみることにします。

①資産価値の概算

前述のとおり、路線価は地価公示価格等の80%程度に設定されているため、路線価に地積を乗じ、これを80%で割り戻せば、その土地の市場での時価を試算することができます。

たとえば、路線価が「300D」と表記されている場合で、その土地の面積が200m2のときの相続税評価額は、300千円×200m2=60,000千円となります。そして、これを80%で割り戻すと75,000千円(=60,000千円÷80%)となり、その土地の市場価値が算定できます。

しかし、あくまでもこの計算結果は自用地としての実勢価格の近似値でしかなく、実際の売買価格の指標の一つにはなりますが、決して取引価格とイコールではありません。しかし、アパートオーナーとしては、路線価を使うことで、その土地の資産価値の目安を簡単に知ることができます。

②相続税評価額の計算

路線価の目的は、相続税等の計算の基礎となる土地の評価にあります。アパートの敷地は、その活用に一定の制約があるため、相続税等の計算では貸家建付地として自用地よりも評価が低くなります。具体的には、『自用地の評価額-自用地の評価額×借地権割合×借家権割合』として計算し、自用地の評価額から一定の制約を受けている部分を控除します。

それでは、①の例と同じく、路線価が「300D」で地積が200m2の貸家建付地の相続税評価額を計算してみます。まず、自用地の相続税評価額は、300千円×200m2=60,000千円です。これに借地権割合と借家権割合を乗じていきますが、借地権割合はその路線価に付されている記号によって決まります。この例でいうと「D」となっているため60%という割合を使いますが、「C」であれば70%であったり、「E」であれば50%であったりと、これらの記号による借地権割合の判定に当たっては、それぞれの路線価図のなかに区分表が示されています。

一方、借家権については、一律30%と定められているのです。このため、この例でいえば、自用地の評価額に借地権割合60%と借家権割合30%を掛け合わせれば、そこから控除できる賃借人の権利部分が算定できます。

実際に計算してみると60,000千円×60%×30%=28,800千円です。これを自用地の評価額から控除すると、貸家建付地としての相続税評価額は31,200千円(=60,000千円-28,800千円)と計算することができます。

なお、生前に取得したアパートが中古のものであったとしても、貸家建付地としての土地の相続税評価額を引き下げることはありません。しかし、土地に対する相続税評価に関しては、土地の形が歪な「不整形地」であるなど、その土地の形状に応じて評価を下げるためのいくつかの補正率が設けられています。そのため、節税に向けた備えを事前に検討しておく余地は十分にあるといえるでしょう。

路線価の「変動」を読み解く

路線価は、その年の1月1日を評価時点とし、1年間の地価変動等を考慮して決定されます。近年、景気の緩やかな回復を背景に、地価は全国平均で4年連続上昇し、これに連動して路線価も上昇基調が続いています。

そして、アパートが多く立地する住宅地でも、交通や生活の利便性に優れ、転入者が多い地域では、住宅需要が高まり地価の上昇が続いています。一方で、これまで低金利によって堅調だった不動産需要が、今後金利が上昇していくなかで、地価にどのような影響をおよぼすのかといった点にも注視しておく必要があるでしょう。

住宅地の地価は商業地などに比べ、変動幅は比較的小さいといえますが、それでも金利の動きだけではなく、景気の動向や人口動態、災害リスクの高まりなどのさまざまな外的要因によって変化します。毎年の路線価を比較しながら、大きな変動がみられたときにその要因を知ることで、所有する土地の資産価値が現状のまま維持されるのか、あるいは将来発生する相続税にまで影響するものなのかどうかを見極めることができるでしょう。

アパートオーナーにとって、その敷地となっている土地は、次世代に引き継ぎたい大切な資産の一つです。将来の資産形成を計画していくうえでも、その資産価値を判断するための目安の一つとして、路線価は大きな役割を担っているといえます。

監修:田中 康雄氏(税理士法人メディア・エス 社員税理士)

監修:田中 康雄氏(税理士法人メディア・エス 社員税理士)

法人税、消費税を専門とし、上場企業から中小企業まで税務業務を担当。資産税関連も含め、税務専門誌に多数執筆。


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