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中東リスクで「新築が建たない」×日銀の「利上げ」…不動産市場激変期に、“中古アパート”が再脚光を浴びる理由

中東情勢の先行き不透明性は、不動産市場にも予想外の影を落としています。原油・ナフサの供給不安から、塗料や断熱材といった石油化学系の建設部材は納期遅延と価格高騰が常態化。「新築を建てたくても建てられない」という業者の声が広がるなか、即座に稼働できる「中古アパート」が再び投資の主役に躍り出ようとしています。金利上昇局面でもあるいま、なぜ中古物件が“選ばれる”のか。マクロ経済の動向と不動産実務の両面に精通した不動産コンサルタント/不動産専門税理士・大浦智志氏が、最新の物流・金融情勢から読み解きます。

「部材不足」が新築市場を直撃…医療・衛生優先の陰で後回しにされる建設現場のリアル

日本は原油輸入の約9割を中東に依存し、その輸送の要衝・ホルムズ海峡の不安はサプライチェーンを直撃します。X Mile の建設業の調達・発注業務従事者100人を対象に実施した「中東情勢(イラン情勢等)に伴う建設業への影響調査(2026年5月)」の調査では、建設業の調達担当者の95%が中東情勢の影響を「実感」または「懸念」と回答。最も影響の大きい品目は「石油化学製品(接着剤・塗料・樹脂資材等)」でした。

実際、断熱材は各社が40%前後の値上げを表明し、塗料用シンナーは75〜80%という異常な高騰と入手難に直面。TOTOやLIXILが一部製品で受注停止・納期未定とするなど影響は広範におよびます。

納期遅延は「2週間〜1ヵ月」が最多の45%、「受注停止で納期未定」も11%に上り、工期遅延や新規受注の抑制を迫られる事業者は7割を超えました。新築は「建てたくても建てられない」局面に入りつつあるのです。

リフォームの困難さを超えるメリット…中古アパートが持つ「即時収益性」と「現物資産」の強み

ここで再評価されるのが中古アパートです。もちろん、中古物件といえども退去後のリフォームや維持管理において、一部の部材不足による遅延リスクと無縁ではいられません。しかし、それを補って余りある強力なメリットが中古アパートには存在します。

最大の強みは、購入直後から家賃収入を得られる「即時収益性」にあります。新築につきものの建設期間中の無収入リスクや工期遅延リスクを回避でき、事業計画が立てやすい点は、資材不足が長期化するいまこそ際立ちます。

加えて見逃せないのが「再調達価格」からみた割安感です。国土交通省の建設工事費デフレーター(建築補修)は2020年の105.0から2024年に130.4へと、わずか5年で約24.2%上昇しました。同じ建物をいま新築すれば大幅に高くつくため、既存ストックである中古物件は相対的に割安な水準にあります。インフレに連動して家賃と資産価値の上昇が期待できる「現物資産」としての性格も、現金の目減りを防ぐ防衛策となるでしょう。

利上げ後の「金利ある世界」での立ち回り…実質金利とキャッシュフローの再計算

ただし、追い風ばかりではありません。鍵を握るのが「実質金利(名目金利−インフレ率)」の視点です。

インフレ率が借入金利を上回る局面では、借入金の実質価値が目減りするため、返済負担が軽くなり、不動産保有は有利に働きます。一方、日銀が利上げに動けば、変動金利の返済額は確実に増えます。インフレによる恩恵と、金利上昇によるコスト増のどちらが勝るのか、シビアな試算が必要です。

ここで、具体的なシミュレーションを行ってみましょう。

物件価格:1億円

借入額:8,000万円

融資期間:30年(元利均等)

上記の条件の場合、金利2.0%なら年間返済は約355万円ですが、3.0%に上がると約404万円。差は年約49万円です。

家賃収入800万円・経費160万円を前提とすると、税引前キャッシュフローは285万円から236万円へ、税引後でもおおむね200万円から160万円へと縮小します。借入残高の大きい投資初期ほど影響は甚大です。

購入前に「金利が1〜2%上昇しても赤字にならないか」を複数シナリオで検証し、目安として実質利回りと借入金利の差(イールドギャップ)2%以上を確保しておくことが、健全な入口戦略の前提となります。

供給減による中古市場の価格高騰に備える…優良物件を逃さないための「スピード感」

新築供給が細る局面が続けば、その需要が中古市場へ流れ込み、優良物件の価格はさらに切り上がる可能性が高まります。だからこそ、出口(売却)と入口(取得)の両面で先手を打つ「スピード感」が問われます。

入口では、金利上昇に耐えるストレスシミュレーションと自己資金比率の確保を済ませ、好条件の物件が出たら即断できる準備を整えておくこと。出口では、再調達価格の割安感が評価されるいまを、保有物件の価値を見極める好機ととらえることが肝要です。

中東情勢と金融政策という二つの不確実性が重なるいま。データに基づく冷静な判断と、決断の速さを両立させることが、投資成果を大きく左右するのです。

※本記事の数値・シミュレーションは一定の前提に基づく概算であり、実際の税引後キャッシュフローは減価償却費や個人の所得税率により変動します。投資判断は最新の市場動向と専門家への相談のうえでご検討ください。

大浦 智志(コネクトコンサルティング株式会社 代表取締役)

大浦 智志(コネクトコンサルティング株式会社 代表取締役)

・税理士

・マンション管理士

・税理士法人アイム会計事務所 社員税理士

・(一社)神奈川県マンション管理士会、湘南支部 所属

・東京地方税理士会、戸塚支部 所属


営繕工事担当から業界に入り、管理営業、フロント担当、管理職(損害代理店業務含む)と転職を通じて、独立系・開発会社系を問わず、分譲マンション管理会社にて約15年間勤務。100以上の管理組合の理事会・総会に出席。

3.11震災を機に、メインキャリアのチェンジを決意し、準備期間を経て、税理士試験に挑戦。

簿記論・財務諸表論・消費税法に合格。2018年3月に名古屋商科大学大学院 会計ファイナンス研究科 税法学コース修了。修士(経営学)、Master of Business Administration(MBA)。


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