投資用不動産を居住用と偽って…不動産投資家が狙われる「詐欺」の実態【弁護士の警鐘】
不動産投資は、安定した収入源として注目を集めていますが、その一方で、悪質な業者による詐欺被害も後を絶ちません。なかには、高利回りをうたって投資家を誘い込み、巨額の資金をだまし取るといった事件も。2024年11月21日には、警視庁暴力団対策課が東京都杉並区、不動産業の男ら3人を詐欺の疑いで再逮捕しました。この事件は、不動産投資における融資詐欺の実態を改めて浮き彫りにするものであり、投資家にとっても大きな警鐘となっています。今回は、昨今の融資詐欺について、不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説していきます。
住宅ローンで不動産投資は詐欺になります!
「不動産投資詐欺」というのは、かなり多義的に用いられている言葉ですが、今回問題になったケースでは「投資目的を隠して住宅ローンで不動産投資をしようとした」という融資スキームです。まず、本件がどういう理由で詐欺になるのかという点を確認して、その後、「不動産投資詐欺」と呼ばれるものをいくつかご紹介したいと思います。
住宅ローンというのは、政策的に低い金利に抑えられており、1%未満などで借りられることが一般的です。対して不動産投資ローンというのは、事業性のローンであり、事業用目的のローンですから、少なくとも住宅ローンよりも金利が高く、感覚的には2~3%ぐらいの設定が多いです。すなわち、住宅ローンで不動産投資を行ってしまえば、その金利差で1~2%程度有利に不動産投資物件を購入できてしまうわけです。
借りているお金を返すとしても、融資目的を偽って有利な金利の契約にて融資資金を借り入れているため、詐欺に該当することになります。金融機関側としては、自宅を購入する住宅ローンなのか、不動産投資用のアパートローンなのかによって、「融資目的」という契約上の重要な要素が大きく異なるわけです。これを偽ってローンを組む行為は、金融機関に対する詐欺行為になり得ます。
「知らなかった」では済まされない…不動産投資家も加害者に
ここで注意してほしいのは、騙されたのは金融機関であり、不動産業者の巧い話に乗って、不正な融資を申し込んでいる人は、被害者ではなく、加害者になるという点です。実際に別件でも、絵を描いた不動産会社だけではなく、不動産投資家も逮捕されているような事例があります。「知らなかった」という言い訳は通用しませんので、そんなに巧い話はなく、不審だなと感じたら専門家に相談のうえ進めたほうがよいでしょう。
よく聞く「不動産詐欺」
これとは別に単純に、「相場よりも高く不動産を売りつけられた! 不動産会社の詐欺だ!」というお話をよく聞きます。これは、相当例外的なケースでなければ詐欺にはならないことが多いです。
たとえば、建物が建てられる前提で購入した土地なのに、行政の都市計画上の制限で建物が建たない土地だった、なんて騙され方をすれば詐欺です。また、地面師という言葉が流行ったように、所有者でもない人が所有者のように振舞って代金をだまし取っているので、これも詐欺です。地面師の場合は、購入する土地が入手できていないので、詐欺だというのは簡単に理解できると思いますし、前者のケースでも、建物が建つか建たないかという重要な要素を騙しているため、詐欺になります。
他方、相場は2,500万円のマンションを3,000万円で購入させられたといったケースが、詐欺になることはほとんどありません。不動産がいくらかが相場なのかということ自体、時期や取引相手によって、刻々と変化しているのが不動産相場の特色です。また、不動産は同じような工業製品ではなく、一つひとつが固有の特色をもつものです。同じ町内であっても、角地かどうかによって坪単価は変わりますし、道路付けがよいかどうかでも、隣接する土地によっても坪単価が変わってきます。すなわち、不動産の価格自体が非常に曖昧なものであり、これが高いか安いかというのは、よっぽどの事情がなければ詐欺とはいえません。
転売目的の不動産会社
また、そもそも転売目的の不動産会社というのは、安く仕入れて高値で売るという事自体が仕事であり、これを詐欺ということもできません。まれに、こういう買取再販会社に対して、「不当に高く転売しているため詐欺だ!」なんて訴訟が起こされることもありますが、これは手伝う弁護士側がしっかりとジャッジすべき事柄だと思います。
買取再販という転売業では、誰が誰に対して売るかによって同じ土地でも価値が変わってくるという点を理解しておく必要があります。たとえば同じ土地であっても、個人が売りに出す場合と、ある程度事業規模のある買取再販業者が売りに出す場合では、基本的に買取再販業者が売りに出すほうが高い値段がつきます。
これは、売主が個人なのか、買取再販業者なのかによって、その土地の安定性が変わるからです。個人の場合には、素人なので土地の埋設物などの状況や隣地との境界が整備されているかどうかわからない、というリスクがあります。他方、業者の場合には、そのあたりの調査を行って売却するか、あとから判明した場合にはその点の補償を行うといった条件が付いていることが多いです。やや語弊があるかもしれませんが、フリマアプリなどを利用して個人からブランド品を買うのと、デパートからブランド品を買うような違いといってもよいかもしれません。
よっぽど中核的な事情を偽られていれば別ですが、基本的に不動産価格の高い安いは詐欺にならないというのは、しっかりと理解して取引に臨みましょう。
不動産業界のグレーな部分
今回のお話を踏まえて注意すべき点は、「住宅ローンで不動産投資ができる」など、あからさまにおかしな話には裏がありますので、注意していきましょう。また、不動産の相場というもの自体わかりづらいため、取引に臨む際には2~3社などの複数社にて査定を取り、実際上の相場観を把握していくというのが重要だと思います。
不動産業界は、かなりクリーンになってきましたが、まだまだグレーな部分が残っている業界でもあります。しっかりと自発的に考えて、不動産を勉強して取引に臨んでいくようにしましょう。
関連記事
サイトについて
アパート経営オンラインは、堅実・健全な不動産賃貸経営業をナビゲートする情報メディアを目指し、既に不動産を経営されている方、初めて行う方に向けてお届けするサイトです。
様々なことに向き合い、改善するきっかけとなりますようアパート経営オンラインでは、成功事例や失敗事例を交え、正しい不動産の経営方法をお伝えいたします。