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「保険代わりに中古アパートを購入しました」…家族に〈負債〉ではなく〈収益〉を遺すための条件

不動産投資は「私的年金」や「生命保険」の役割を期待されることが多いものです。融資を利用した中古アパート投資では、定期的な家賃収入に加え、団体信用生命保険(団信)への加入により、万が一の際にも家族に無借金の収益物件を遺せる点が大きな魅力です。しかし、それが真の“保険”として機能するかは、物件の稼働力次第です。保険としての実効性を高めるための物件選定と財務設計について、ティー・コンサル株式会社代表取締役で不動産鑑定士の小俣年穂氏が解説します。

働き盛りの現役世代が選択する「不動産投資」というリスクヘッジ

「家族のための生活資金をより多く確保したい」「老後の生活資金を蓄えたい」そんな想いで日々仕事に打ち込んでいる人は多いはずです。しかし、どれほど努力を重ねても、予期せぬ病気や勤務している会社のリストラなど、「将来働けなくなるリスク」をゼロにすることはできません。そうしたリスクヘッジの候補として「不動産投資」を選択する人がいます。

将来働けなくなるリスクを補う手段は、貯蓄や保険だけではありません。金融機関の融資と「団体信用生命保険(団信)」を組み合わせた不動産投資は、万が一の際、家族に「無借金の収益物件」という強固な生活基盤を遺せるのが特徴です。

不動産投資にあたっては、金融機関からローンを調達し家賃収入で返済していくことが基本的な流れになりますが、その成否をわけるのは、当該不動産の「立地」です。

高利回りを謳う投資用不動産は数多ありますが、訳アリなものも多く、期待した成果が得られないこともあるでしょう。

入居者の立場になって、この場所であれば住みたいと思えればおおむね投資対象としては合格です。それに加えて建物の状況、道路付け、出口の選択肢(現状、建替え、更地売却など)が多いかなど、細部の確認を終えたうえで投資を行うか否かを判断することが肝要です。

ローン金額や金利については金融機関の審査があるため、審査が通ればおおむね返済に問題ないと考えられますが、将来の金利上昇予測も勘案し、「不動産収支だけで無理なく返済できるか」も、事前にシミュレーションしておきましょう。

生命保険よりも「中古アパート」を選ぶ理由

生命保険には終身保険や定期保険などの種類があり、死亡や大病を患ったときに家族が現金を受け取れる仕組みです。しかし、保険に加入するためには毎月一定金額を保険会社へ支払う必要があり、保険料が家計にとって重荷になるケースがあります。

一方、不動産投資の「団信」も保険の一種ですが、ローンの返済時に金利と合わせ、0.2%~0.3%を乗せて支払いを行います。不動産投資の場合、不動産収支からローン返済を行うため、団信の支払原資は「入居者からの家賃」です。つまり、上手く設計ができれば実質、自らの負担なく保険に入ることが可能になります。

実際に、不動産投資を始めたことで、団信の仕組みを使い、既存の生命保険を解約して家計の収支を改善させた例も少なくありません。

ただし、不動産投資の場合、大規模修繕や原状回復による支出などで相応の経費がかかることには注意してください。こうした経費をなるべく抑えるには、建物の状態がよく、かつ空室率の低い物件を選ぶことが重要です。

また不動産投資のなかでも、中古アパートには「ならでは」のメリットがあります。それが、減価償却の活用です。中古アパートの場合、建物の減価償却費を計上することにより、課税所得を減らすことが期待できます。減価償却費はキャッシュアウトを伴わない「みなし経費」であり、計上することで所得税や住民税が下がるケースもあります。多くの不動産会社が「減価償却費」を謳った不動産投資商品を提供している理由の一つです。

家族が困らないために…相続後に「管理の手間」をかけず収益を受け取れる仕組み作り

団信を利用した不動産投資は、相続後に家族の選択肢を増やすことが可能です。相続後に家族が「月々の生活費」を受け取り続けるか、あるいは「物件を売却してまとまった現金」にするか、状況に応じて選ぶことができます。

たとえば、不動産の家賃収入50万円、ローン返済月額35万円である場合で考えていきましょう。ローンの借入人が逝去した場合には、家族は当該不動産を相続することで月額50万円のキャッシュフローを得ることができます(相続税は考慮外とします)。借金がゼロになった不動産は、そのまま家族の「私的年金」となります。

仮に、当該不動産の市場価値が1億円であった場合、相続した家族は不動産を売却することで、まとまったお金を得ることもできるのです。

所有し続けていく場合においては、相続人が不動産経営に不慣れなことも考えられます。その場合は、サブリース契約を行い、賃料の平準化をさせることも検討の一つですが、賃料が上昇している局面においては、当該上昇分がサブリース会社の収入になる契約が一般的です。賃料上昇分のメリットを享受するためには、一般管理でも不動産経営が継続できるよう家族に対して常に情報を共有したり、交渉の席に同席させたりすることも大切です。

「保険としての不動産」の限界…インフレ下で見直すべき、保障額と物件価値のバランス

コロナ禍以降はインフレが顕著に進んでいます。金利や不動産価格の上昇により、コロナ禍以前に比べて資金調達が困難になってきました。また、既存の不動産投資家であっても、金利上昇の影響を受け、キャッシュフローが悪化しているケースを耳にします。

不動産経営を円滑に進めるためには賃料の上昇が不可欠です。しかし、不動産の賃料はインフレの速度に対して遅効的な性質を持っており、実際には柔軟に上昇させることは困難です。その大きな理由は、借地借家法では借家人の居住権を保護していることにあります。契約内容にもよりますが、法的な背景を考えると、賃料の大幅な引き上げは実質的に困難であるといわざるを得ません。

一方で、金利の上昇によって保険の商品性はよくなっています。少額の積立額で大きな保障を得られる商品や、運用利回りの上昇が反映されて解約返戻率が高まった商品など、活用の選択肢は広がっています。また、生命保険は相続時に「相続人の人数×500万円」の非課税枠もあり、税務上の魅力も依然として強力です。

不動産は優れたリスクヘッジの手段ですが、それ一点に依存するのは危険です。将来の資産形成やリスクヘッジにおいては、投資するアセットの割合やその将来性などポートフォリオを常に見直ししてく姿勢こそが大切なのです。

小俣 年穂氏(ティー・コンサル株式会社 代表取締役)

小俣 年穂氏(ティー・コンサル株式会社 代表取締役)

1978年東京都出身。中央大学経済学部卒。


大学卒業後、不動産鑑定業者にて鑑定業務、不動産ファンドビジネスに従事。その後、金融の視点から不動産の価格形成を理解するため銀行(三井住友銀行)へ転職。融資業務、与信管理業務、アセットマネジメント業務(出向先にて)に従事したのち、個人富裕層向けコンサルティング業務に従事。アパートローン融資、資金運用、税金対策、遺言作成など承継対策業務を幅広く経験。


その後、横浜銀行に転じ本部所属のうえ担当地区内のコンサルティング能力向上、富裕層取引の拡大などで貢献し頭取表彰も受賞。


2022年にティー・コンサル株式会社を創業。金融に精通した不動産専門家として、多くの資産家(地主・経営者)や専門家(弁護士・税理士)からの相談を受けオーダーメイド型の問題解決を行っている。


また、不動産鑑定士として銀行、税理士、上場企業などから依頼を受け不動産評価にも取り組んでいる。


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